もう一つの疑問は、なぜ相対年齢効果の格差は、長期にわたって観察されるのだろうか、というものだ。実はこの点については、まだそれほど多くのことがわかっている状況にはない。
先行研究の中には、人生の初期に相対年齢が高いことによって同級生よりもスポーツや勉強面で有利になり、そのことが自分に対する自尊心や自己効力感を高めるからではないか、とか、教員やスポーツの指導者が相対年齢の高い子どもに対して肯定的な指導や活躍の場を与えることが理由ではないか、と指摘するものはある。が、いずれも実証的な検証は今後に委ねられている。
相対年齢効果の格差解消の「処方せん」
では、相対年齢効果の格差にどう対処すべきなのか。
具体的な対策としては、指導者が相対年齢の高い子どもばかりによい機会を与えないようにする配慮を行うことが考えられる。
特に低年齢の子どもたちに、生まれ月によらず「一律」の扱いをすると、指導者の目線は、相対年齢の高い「よくできる子」に注がれがちで、相対年齢の低い子どもが不利になっている可能性は高い。
この点に配慮して、いくつかの国では、早生まれの子どもたちを対象に補習をしたり、生まれ月によってクラス分けをしたり、スポーツにおいてはゼッケンや背番号を生まれ月にしたりするなどの取り組みを行っている。
こうした取り組みは日本でも参考になるだろう。
[1] Dudink, A. (1994). Birth date and sporting success. Nature.
[2] Stipek, D. (2002). At what age should children enter kindergarten?: A question for policy makers and parents. Society for Research in Child Development.
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[4] 川口大司, & 森啓明. (2007). 誕生日と学業成績・最終学歴. 日本労働研究雑誌, 569(12), 29-42.
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