「4月生まれ有利」「翌3月生まれ不利」は本当か

親や先生は「生まれ月の格差」に注意が必要だ

Redshirtというのは、大学におけるアメリカンフットボールの選手登録制度を語源としている。選手登録ができる年限は4年間となっているため、同じポジションに有能な上級生がいる場合、新入生を選手登録せずに2年目から選手登録し、大学に在籍する期間を延ばす選手のことをRedshirtという。

今回の執筆者:中室牧子(なかむろ まきこ)/慶應義塾大学総合政策学部准教授。1998年慶應義塾大学卒業。アメリカ・ニューヨーク市のコロンビア大学で博士号を取得(Ph.D)。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て、2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授に就任し、現在に至る。専門は教育を経済学的な手法で分析する「教育経済学」。単著に『「学力」の経済学』がある(写真:西澤佑介)

このことから、後に有利になるよう学年を遅らせる戦略のことをRedshirtと呼称するようになったらしい。

アメリカでは10%程度の保護者が幼稚園や小学校の入学年齢を遅らせる選択をしている。富裕層にこうした選択をする人が多いことも知られている。

おそらく、相対年齢の低い子どもをもつ教育熱心な親が、自分の子どもが有利になるように入学時期を遅らせているのだろう。このような親の自発的な選択を考慮しないと、学力に対する生まれ月の影響を少なく見積もってしまう。こうした推計上の歪み(バイアス)は、専門用語で「セレクション・バイアス」と呼ばれている。

生まれ月の格差はほぼ縮小しない

周知のとおり、日本はアメリカのように、保護者が子どもの入学年度を選ぶことができない。先進国では、こうした国はすでに少数派で、日本以外にイギリスやノルウェーなどがある。

経済学的な視点でみれば、こうした国々のデータを使うと、生まれ月の学力への影響を推定する際、親が自発的に入学時期を選択することによるバイアスが生じにくいので分析に適しているといえる。

そこで、国際的に比較可能な学力調査(TIMSS「国際数学・理科教育動向調査」)を用いて、(その他のさまざまな統計的バイアスに配慮したうえで)日本のデータを分析した結果をみてみると、小学校4年生のときに生じている生まれ月の格差は、中学3年生になってもほとんど縮小していない[3]。

次ページ「生まれ月の格差」は自然解消されない?
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