インサイダー情報があれば、値上がりが期待できる株式等を購入して儲けたり、値下がりしそうな株式等を売却して損を避けたりできる。一部の人だけが、このように得をすることは許されない。だから厳しく規制されているわけだ。
仮に、インサイダー取引のつもりがなくても、情報が公開される前に、その情報を知って株式等の売買をすれば、インサイダー取引の疑いをかけられる可能性もある。
「上場企業なら、たとえば、『自社株の売買をするときは関係部署にお伺いを立てる』『決算発表の前後は自社株の売買禁止』など、就業規則の中にインサイダー取引防止規程があるはずなので、それに従うことが基本」(由木氏)
就業規則のインサイダー取引防止規程に反する売買を行っても、必ずしも法律違反にはならない。しかし、就業規則に反したということで、社内の罰則の対象にはなる。
最も注意してほしいのが情報漏洩だ。自分は株式等の売買にかかわっていなくても、自分が漏らした情報によって売買がなされれば、インサイダー取引同様の罰則を科せられることもある。取引先や友人に、社内情報を聞かれて、うっかり漏らせば、刑事罰を科せられることもありうるので、話す内容は慎重に選びたい。ましてSNSなどに書き込むなど言語道断だ。
白紙の領収書を使って会社に請求すると詐欺罪に
最後に、日常的にやりそうな「やってはいけない」をまとめた。
まずは、営業担当者がウソの日報を書いてしまうとどうなるか。「アポが取れなかったので行き先がない。喫茶店で時間を潰していたが、日報には数社回ったとウソを書いた」……。こんなケースが考えられる。
軽い気持ちでやってしまうと、結構罪は重い。事実と異なることを書いているうえに、働いていないのに給与をもらっている。加えて、つじつま合わせのために行ってもいない場所の交通費をもらっていることもあるだろう。いずれも服務規律に違反しているし、詐欺に該当する可能性もある。理屈でいえば、1回のウソで懲戒処分になっても仕方がない。それほど重大な服務規律の違反になるのだ。
ちょっとした経費をごまかす、という話を聞いたことのある新人もいるかもしれない。たとえば、喫茶店代や飲み代。同僚、あるいは友人知人などと利用しただけなのに、取引先との打ち合わせや接待のフリをする。
安い電車代のルートで出掛けたのに、高い電車代のルートを使ったフリをする。プライベートで購入した本の代金を資料と偽って請求する……。こうしたケースは、いずれも厳密には横領や詐欺に該当する。
「領収書下さい」と頼むと、ときどき出てくる白紙の領収書。あれを使うとどうなるのだろうか? まず、白紙の領収書に、自分で数字を書き込めば文書偽造に該当する可能性がある。もし、違う価格を書いて、それを経理などに回せば、横領や詐欺に該当することもある。また、発行した側、もらった側ともに税法違反の問題が付きまとうという。
「中でも日常的にお金を扱う仕事についている人は、より罰則が厳しくなります。バスの運転手が2000円程度の売り上げを着服して、懲戒解雇が認められた裁判例もあるくらいです」(由木氏)
額が小さくても、仮に周りがやっていたとしても就業規則違反はダメ。場合によっては犯罪にもなる。そんなささいな不正で懲戒解雇になったら目も当てられない。
いずれにしても、「やってはいけない」ことのリスクは、やったことに見合わないほど高いことを認識すべきだろう。気を引き締める意味でも、あらためて就業規則に目を通して、社会人としての自覚を高めておきたいものだ。
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