ポケモンGO開発者・野村氏のキャリアの転機

エンジニアからプロダクトマネジャーへ転身

実際、言葉だけではなく、マイケルはそれを実践していました。困っていることがあれば徹底的にサポートしてくれる、頼れる存在でした。マネジャーとは、“命令する人”ではなく、“チームにとって何が最良かを言える人”なのだと、この時彼から学びました。

その後、Nianticでは今の上司に当たる河合敬一に出会いました。河合のマネジメントスタイルもよく似ていて、僕が困っている時にはしっかりサポートしてくれます。プロダクトマネージャーになって、右も左もわからない僕に仕事のやり方を教えてくれたのも河合です。河合がいなかったらPokémon GOはできなかったと思います。

2人から学んだことを、Pokémon GOのチームの中で活かしていきたいと思っています。

チームをリードし、プロダクトを育てていくという挑戦

Pokémon GOは確かに多くのユーザーに支持されるプロダクトになりました。しかし、「大ヒット」は、ずっと続くものではありません。現在は、使い続けてくれているユーザーへどう価値を提供し続けるか、また新たなユーザーをどう増やしていくかを考えるフェーズに来ています。

プロダクトが成長していけるよう、イベントやキャンペーンを企画することも、僕の大事な仕事です。ユーザーをいかに楽しませるか、どうすればより多くのユーザーに楽しんでもらえるか、そればかりを考えています。

昨年8月に横浜で行われたPokémon GOのイベントでは、1週間ほどの期間中に約200万人の方が集まってくれました。僕はスタジアムの中に入って、ミュウツーとバトルするイベントで指揮にあたりました。そこでは、何か困っているユーザーがいれば、近付いて「どうしました?」と聞き、解決のお手伝いをするということもしていました。

イベント終了間近に、ある女性ユーザーが「つながらない」と言って困っていました。やっと解決した時には、既にもう終了時刻の直前。ミュウツーとバトルして勝つためには、ある程度の人数のユーザーが協力する必要があります。

多くのユーザーが帰り始めている中、僕はスタジム中を駆け回っていろいろな人に声を掛け、「一緒にやりませんか?」と誘って、彼女を含めて15人くらいでミュウツーとバトルしました。「せーの!」という掛け声でゲームを始めて、最後は全員がミュウツーをゲット。みんな、喜んで帰ってくれました。

また、お叱りの声もあれば、誉めていただける時もあります。「これまで、家に引き籠もってばかりいたけれど、Pokémon GOで遊ぶようになってからよく外出するようになりました」とか、「他人とのコミュニケーションが苦でなくなった。人生が変わりました」といった手紙を、本人やご家族からいただいたこともあります。

こんなふうに、ユーザーの皆さんの良い思い出になった出来事や、笑顔になれた体験のお手伝いができた時、僕はとても満たされた気持ちになります。誰かの人生に少しでもプラスの影響を与えることができたとすれば、これほどうれしいことはありません。

昨年から、Pokémon GOのチームメンバーの拡充に取り組んでいます。それにより、もっと多くの機能の追加や、改善を素早く実行できる体制をつくる。チームのサイズは大きくなり、開発拠点も増えています。地理的に分散したチームをうまくリードしなければなりません。僕にとっては、それが当面の最大のチャレンジになります。

個人的なことでいうと、実は僕、数年前からピアノを始めたんです。独学で練習中ですが、上手に弾けるようになりたいと思って音楽理論の文献も読むようになりました。プログラミングを始めた時と同様、やってみると裏側の仕組みが知りたくなる性分なんですね(笑)。

僕は生来、いろいろなものに興味が湧く人間なのですが、どんな時でも、何に対しても、楽しみを見つけられることが自分の最大の強みだと思っています。ですから、これまでの人生の中で、苦しいとか辛い事があったときでも、その中にうまく楽しみを見つけて乗り越えてきました。

きっと今後も困難にぶつかることはたくさんあるでしょう。でも、そんな時でもきっと乗り切れるだろうと楽観的に考えています。これからも、僕らしく、好奇心を力に変えて、ワクワクするような大きな挑戦をし続けていきたいですね。

(取材・文/津田浩司、福井千尋(編集部) 撮影/吉永和久)

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