レベルファイブの真似できない「凄さの秘訣」 日野社長が語る「妖怪ウォッチ」成功の理由

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認知度の高いキャラクターを用いた映画を中心に、プロモーションを集中投下するタイミングで多様なメディアに展開するメディアミックスは、ハリウッドでもいくつかトライアルがある。たとえば、大コケしたものの企画製作時から、複数メディアへの横展開を計画的に推し進めたソニー・ピクチャーズの『ゴーストバスターズ』などの例がある。

しかし、いくら映画のプロモーションで大きな投資をするからと、そこからの横展開を期待して別メディアの商品を開発しても、結局は映画がコケれば“取らぬ狸の皮算用”となる。

彼らにとって、製作委員会制度は各ジャンルの専門家が「○○のジャンルで成功するには……」とさまざまな意見を寄せ、よりよい成功事例を作っていくための前向きな仕組みだととらえたようで、実に興味深いと話していた。出資するからには、それぞれのジャンルで主体的に投資する知財の価値を守り、育てるだろうと考えたようだ。

しかし現実は複雑だ。製作委員会制による知財開発には、多くの成功事例と同じように多くの失敗例がある。失敗の最も大きな理由として耳にするのが、リーダーシップの不在だ。横断的にキャラクターやストーリー、世界観といった作品の根幹をなす部分について、スムーズな協業が進まない場合がある。

ゲームとアニメでは投資金額が異なる

アニメ作品を原作にしてゲームを開発するといった場合、それぞれの制作にかかる投資金額の違いが大きいことも理由のひとつだろう。

ゲーム制作には最低でも数十億円規模の投資が必要になる。ところが、キッズ向けアニメ制作は(内容にもよるが)30分もの1本当たり1000~1300万円程度、放送枠の確保に毎月2500万円程度がかかると仮定しても、1クール13話の構成でおおよそ2億円から2億6000万円ほどの費用で済む。

仮にアニメ制作にゲーム会社が投資したとしても、ヒットする保証がなければ投資リスクが大きいだけで、バランスの取れた枠組みとはなりにくい。結果、製作委員会には投資はするものの、ヒット後しかゲーム開発を開始できず、完成する頃には作品人気が下火になってしまうというケースもある。

それ以外のジャンルも含め、各メディアでの事業展開を考えるステークホルダーの思惑はそれぞれ異なり、異なるメディアに対して一貫した戦略を進めにくい。

ところが、レベルファイブのかかわるクロスメディアコンテンツには、そうした混乱が見られない。統一された世界観やキャラクターイメージを損ねない商品展開はもちろん、レベルファイブの本業であるゲーム開発をアニメ放映にキッチリ合わせ込み、タイミングを合わせて事業展開している。

こうした異なるジャンルのメディアを、スケジュールも含めてきっちりと管理しながら制作する力は、この業界でもトップクラスであることは間違いない。

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