レベルファイブの真似できない「凄さの秘訣」 日野社長が語る「妖怪ウォッチ」成功の理由

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強い意思を持って世界の構築を行った本人が、ゲーム、アニメ、コミック、玩具、あるいはノベライズ(小説化)など、すべてにかかわる。たとえば「玩具ならば、どのような玩具なのか、パッケージはどういったデザインなのか。新しいキャラクターを投入するなら、そのキャラクターの髪の毛のデザインやはね方、色に至るまで原作者の責任として品質管理に参加します」(日野社長)。

多忙を極めるが「ゲームを中心にした世界構築、コンテンツ制作が大好きなんですよ。半分以上、自分の趣味とも言えます。でも、だからこそエネルギーを注ぎ込めるし、責任を持って自らの考えを伝えることができた」と日野社長。

しかし、現在に至るまでの道は必ずしもの平坦ではなかったようだ。

ゲームの世界で成功していたからといって、アニメの世界では成功者ではなかった。単純に“こうあるべきだ”と旗を振ったところで、異業種のクリエーターたちが思ったとおりに動いてくれるわけではないからだ。

協業を進めるうちに信頼を得ていった

「アニメ制作のスタッフにも、きちんとリーダーとして認められ、信頼関係を構築しなければなりませんでした。しかしイナズマイレブンの制作の中で、ゲームサイドの人間としてアニメ制作スタッフにお願いして入れてもらった要素が、最終的にゲーム世界とつながったり、より世界観を広げていく結果を生み出すなど、協業を進めていくうちに“こういうことを言っていたのか”と、少しずつ信頼を得ていきました。

異なるメディアですから、別ジャンルのクリエーターの発想は時に“突飛”に思えるものです。しかし、そんな価値観の異なるジャンルのアイデアを、ゲーム、アニメ、コミック、映画といった形にまとめ上げることで信頼をしてもらえるようになったのです。最初は誰もが実績を持っていません。しかし、異なるジャンルであっても委員会に参加するかぎりには責任を持って制作にかかわる。それを何年も続けてきた結果です」(日野社長)

すなわち、委員会制度においても出資してゲーム領域への展開するだけにとどまらず、そもそものコンテンツの原点からクリエーティブの中心にかかわり、作品が展開する全事業領域に積極的に参加する。“口先で介入”するのではなく、制作の中心に切り込んで結果を出す。レベルファイブ、そして日野社長のユニークさは、委員会制度にあっても隅から隅まで気を配らせていく部分にあるのだろう。

さて、そんな日野社長はスマートフォンの普及、それに伴う映像作品やコミックスの楽しまれ方の変化をどう見ているのだろうか。

レベルファイブが得意とする小中学生向けゲームは、主に携帯ゲーム機が市場の中心にあるが、スマートフォン向けゲーム市場の成長は当然無視できない。またスマートフォン向けゲームは、アプリマーケットの中でランキングが固定化しやすく、新作のユーザー獲得コストが高く定着率も低いという特徴があるからだ。

2011年にはDeNAと提携、2017年にはゲーム・スマホ向けアプリ開発子会社「LEVEL5 comcept」を設立しているが、今後の市場を日野社長はどう予測するのか――。

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