夜明け前に終わった「日本の民泊産業」の末路 日本の観光業界とAirbnbという最悪コンビ

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実際、一般の人が民泊的なビジネスを始めるモチベーションはいつくかの理由から下がっている。まず、民泊オーナーが年間貸し出せる日数は最長で180日となり、半減した。罰則もとんでもなく厳しい。違反すれば罰金100万円(法施行の前は3万円)と1年の懲役が待っている。

加えて、マンション管理会社は基本的に、よそ者(外国人は言うまでもなく)には貸したくないと思っている。「2021年完成予定のマンションを一室購入したのですが、不動産屋から民泊は一切不可って言われたんですよ!」と、あるフランス人は話す。つまり、民泊の提供場所として認められるのは事実上、一軒家、あるいはビルまるごと1棟に限られるということだ。

「放置」していたエアビーの責任

1つ大事なことを補足すると、日本では地方自治体に独自のルールを付け加える権利が法律で認められている。つまり、地方自治体の思うままだ。民泊を始めたいならまず、山のような書類に記入しなければならず、その後もいくつかの自治体が出す要求に応えなければならない。

そうこうしてやっと許可が下りるのだ。おカネも時間も相当かかるこの手続きがこの新しい産業の首を絞め始めている。2015年には5600万人の観光客が訪れた観光都市、京都で、3月15日以降に民泊の許可が下りたのはたったの6件である。民泊ニュースのエアスティアによると、今年1月時点で日本には5万4040件の民泊があったが、観光庁によると、現時点での民泊数は3451件になっている。

筆者が住む新宿区では、6月15日以降、135件の民泊が認められた。が、同区の住居専用地域では金曜日午後から日曜日までしか宿泊事業を実施することができない。多くの外国人観光客が比較的長い期間旅行することを考えると、これはまったくニーズにマッチしないし、民泊をやる側にもメリットが見えにくい。筆者の友人や、近所の人たちも、民泊を続けるのはすでにあきらめている。

今回、大量のキャンセルが発生する事態となったことについて、問題が発覚するまで放置していたエアビーの責任も重い。「エアビーは2018年6月から新法に従わないといけないことを認識しており、状況に対応すべく改善を進めているとしていた。ところが、5月になってどうやらエアビーは違法民泊をサイト上に放置するらしいという話が入ってきたので、われわれも動いた」と、観光庁の関係者は明かす。

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