――政治家もこの映画のようにとりあえずハグをすることが必要ですか。
ナカシュ:そうですね(笑)。
――『最強のふたり』もそうですし、『サンバ』もそうでしたが、お2人の映画は、障害がある人と健常者との壁だったり、人種の違いの壁といった、立場の違う人たちの壁を取り払って、それこそ“ハグをしよう”というのがテーマとしてあるように思うのですが。
トレダノ:テーマがハグしよう、であるかどうかは置いておいて(笑)。
ナカシュ:僕たちは人が思うほどに、違いはないんだということが言いたいんですよ。
――ただしこの不寛容な時代だからこそ、その壁を乗り越えることが求められているように思います。そのためにはどうしたらいいのでしょうか。
トレダノ:やはり他の人の話に耳を傾けるとか、相手の目を見るとかじゃないですかね。今はどんどんと個人主義の社会になっています。地下鉄でもみんなスマホの画面を見ていて、実際のコミュニケーションをとっている人はほとんどいない。コミュニケーションというのは相手の目を見たり、他人の話を聞くことだから。
だからわれわれは映画を通じて、コミュニケーションの大切さというモデルを提示しているんです。それはうまくいくこともあるし、うまくいかないこともある。でもとにかく僕たちの映画では、ユーモアで語って、ポジティブなものを見せるようにしているんです。われわれはつらい状況に陥ったことを嘆くよりも、笑うほうを選びたいんですよ。
リーダーというのは船長みたいなもの
――この映画に出てくる従業員たちはすごく個性的な人たちで、彼らをまとめるのは本当に大変だろうなと思いました。そういう意味でこの映画は、チームをいかにして導くか、その示唆を与えてくれるように思いました。
ナカシュ:リーダーというのは船長みたいなもの。最終的にみんなを港にたどり着くよう、導くことが大切になります。そのためには、みんなにやる気を出させるということも必要です。
トレダノ:階層が違う人たち、または文化が違う人たちをいかにしてまとめるか。いかにしてお互いがいい関係で仕事ができるような雰囲気づくりをするかというのは、リーダーの素質だと思います。この映画の中でも不法滞在をしている人が調理場で働いているかと思えば、元フランス語の先生がアルバイトに来ていたりもしている。そんな多様な人たちをうまくまとめ上げて、連携させるというのは、リーダーの役割なんだと思います。
――そういうお2人もリーダーであるわけですが。
ナカシュ:僕らは“最強のふたり”ですからね(笑)。
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