台風の眼にジェット機で飛び込む気象学者、「台風は空に浮かぶCD」と例えるワケ。「台風は進行方向の右側と左側、どちらが危険か」知ってる?

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台風10号
2022年9月17日(土)にNASAが公開した衛星画像には、日本南西部に接近する台風10号(ナンマドル)が写っている(提供:NASA/AP/アフロ)
気象学の第一人者で2017年、日本人として初めて、航空機によるスーパー台風の直接観測に成功した名古屋大学宇宙地球環境研究所教授の坪木和久さんによる新著『天気のからくり』より一部を抜粋してご紹介します。

台風は「空に浮かぶCD」

昭和前半生まれの方にとって、音楽といえばレコードだったと思います。右手でアームを持ち上げ、レコードの縁に針をそっと落とすのは、それなりに習熟が必要でした。

ターンテーブルにのったレコードの回転方向は必ず時計回りでした。私はそれが不思議で、なぜ反時計回りのターンテーブルがないのだろうと思っていました。

おそらくそれは右利きの人が操作しやすい回転方向なのでしょう。その後、レコードはコンパクトディスク(CD)に取って代わられましたが、回転の向きはやはり時計回りが引き継がれています。

実は、CDの回転方向は南半球の低気圧の回転方向と同じです。一方で北半球では、台風やハリケーンなどの熱帯低気圧も、日本付近を西から東に通過する温帯低気圧もすべて反時計回りです。その理由は地球が北極からみて反時計回りに自転しているからです。

回転方向が逆であることを除くと、台風はCDのような薄い円盤にたとえることができます。

細かいことを言えばCDはどこも同じ速さで回転しているのに対して、台風は中心付近ほど速く回転しているという違いはありますが、ここで重要なことは、台風というのはCDのように薄いもので、それが海の上に浮かぶようにして回転しているということです。

台風にはさまざまな大きさのものがありますが、「大型」の台風は直径が1000㎞以上で、高さは10㎞あまりですので(眼の壁雲は高度15㎞以上に達することがあります)、横幅は高さの約100倍になります。

一方、CDは直径が12㎝、厚さが1.2㎜なので、横と縦の比率は台風と同じ程度になります。つまり反時計回りの台風は、ちょうどCDが水に浮かんで逆回転しているようなものなのです。

このように台風をCDのような薄い円盤と考えると、上面、下面、および側面のうち、側面の面積はほとんど無視できます。そうすると全表面積のうち、ほぼ半分が海面に接していることになります。

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