台風の眼にジェット機で飛び込む気象学者、「台風は空に浮かぶCD」と例えるワケ。「台風は進行方向の右側と左側、どちらが危険か」知ってる?
それは自動車がガソリンを吸入し(エネルギー注入)、圧縮・燃焼して(エネルギー変換)、排気するのに似ています。つまり台風も一つの熱機関(エンジン)と考えることができるのです。
地球温暖化が進むと海洋が暖まり、注入される水蒸気が増加して、台風はより強いものになります。それはちょうど車のアクセルをより強く踏み込んでいるようなものです。
車も台風もアクセルの踏みすぎは被害を大きくしてしまいます。そうならないように私たちは地球の未来を真剣に考えなければなりません。台風はそんなことを考える一つのきっかけになるのです。
台風の暴風域はどこにある?
私の父は自宅の敷地内にビニールハウスを建て、椎茸栽培をしていました。その出荷で得られる収入は、家計の一部となっていました。私がまだ小学校の低学年のころのことですが、今でもその栽培プロセスを覚えていて、椎茸ならば自分で栽培できる気がします。
ビニールハウスの最大の敵は台風でした。骨組みは鉄骨でできていても、台風の強い風をもろに受けて、鉄骨もろとも簡単に飛ばされてしまいます。
実家は気象災害の少ない地域にありましたが、それでも台風でめちゃめちゃに壊されたことが二、三度ありました。それを父が黙ってかたづけていたことを覚えています。
「台風の暴風被害に苦しんでいた親父の無念をなんとかしたい」
そのために台風の研究者になったということであれば美談なのですが、残念ながら私が台風研究を始めたときには、小さいころのことはもう記憶の彼方でした。
それにしても台風はなぜこんなにも強い風をもたらすのでしょう。台風による暴風災害がしばしば発生する日本に暮らしていると、誰もがそう思うのではないでしょうか。
地球が自転しているために、熱帯や亜熱帯の低緯度地域でも、台風の発生域には常に弱い渦が存在します。
ここで渦というのは気象学的に定義される空気の回転のことで、気象衛星からときどきみられる渦巻く雲のようなものとは異なり、見た目から渦と認識することはほとんどできません。しかし、それが台風の大きな渦のもとになるのです。
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