「メシウマ」の感情をあえて隠すのは不自然だ

他人の不幸は蜜の味、自分の不幸も笑われろ

よくあるのが次のような話だ。定年を迎えたのに、なにやら専務の覚えめでたき同期がそれ以降も賃金も役職も継続して勤めることが決まった。定年で退職する同期にとってはおもしろくない。仮に定年延長を申請したとしても給料は大幅にカットされる。アイツはうまいこと、専務にゴマをすって働き続けるのかと、内心腹立たしい思いを持っていた。

ところが2年経った頃、彼が大きな仕事に失敗して、即クビを切られたのだという。しょげている。元気がなく、体調も悪いようだという話が、同期のなかで、楽しげに走り回る。もちろん、「気の毒だなあ、どうも体調がすぐれないようだ」と言いながら、みな、目が笑っている。こういう話は実に楽しいものだ。「メシウマ」なのである。

経営者もライバルが経営難に陥ると嬉しい

あるいは、「えっアイツ、離婚するの? 熟年離婚ってやつか。オレたちの出世頭だったけど、そうか自由の身か。それで、退職金が全部、慰謝料で持っていかれるのか。可哀そうだなあ」と言いながら、「これはおもしろい。帰ったら女房と呑みながら、酒の肴にしよう」などと、心のなかでほくそ笑む。

時には、「彼、株で相当に儲けて高層マンションを買って住んでいたけど、暴落で行方不明。やあ、気の毒だなあ」と酒場で会話する年配者たちの会話は大いに弾んでいる。

経営者同士でも、ライバルが経営難に陥ると、表向きは慎重な振る舞いをする。記者会見などでコメントを求められれば「あの社長は、やり手で、なかなかの手腕の持ち主でした」などと、真面目くさって語る。しかし、心のなかでは「ざまあみろ、オレのほうが経営がうまかったのだ」と思っているのは確かなことである。

人間の感情とはそういうものなのだ。「可哀そうだ」「気の毒だ」という言葉は、「うれしい」「楽しい」という本音を隠して発している言葉にすぎない。本心では「ヤツの失敗でオレは今夜はよく眠れる」という喜びに満ち満ちているのだ。

これは、マズイことなのだろうか。私はそうは思わない。それでいいのだと思う。

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