ヒットの裏に新世代主婦?Mart族の嗅覚 「自分主導」でブームを作り出す主婦たち

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旦那のいない大半の日常で、主婦が車のユーザーなのです。なんのために運転しているかというと、大抵は子どもの塾やお稽古ごとの送り迎え。で、合間にコンビニに寄ってコーヒーを買う。イートインがある店も増えましたが、「トイレのそばだから、そこでは飲みたくない」と言う。なので、駐車場のミニバンに戻って、車内でコーヒーを飲むのだそうです。それがミニバンのリアリティですよ。

もっと言うと、最近は「週末のキャンプ」も変わっている。旦那がママ文化に染まり始めているんですよ。かつてはコストコに行ってもフードコートで待ち続けていた旦那が、今は喜々としてカートを押して買い物を楽しんでいる。特集企画で柔軟剤の香りのマイブレンドを募集した際も、ちらほらパパ読者からの応募があってびっくりしました。

男性は平日の仕事で疲弊しているからか、週末の家庭文化まで創る余裕がない。だから今は週末の過ごし方も、ミニバンの使い方も、全部奥さんがイニシアチブを握っていると言えます。そう考えると、CMの作り方もほかにあるような気がしますよね。

リアリティをつかめば、もっと売れる

――メーカーにも、まだまだできることがたくさんありそうですね。

消費者のリアリティから生み出された、Martコラボのポッキーはデザインが可愛らしい

商品やCMを作る側からしたら、「主婦が子どもを送り迎えする日常に、ドラマなんてないでしょう」と思うのもわからなくないですが、そうした発想では、これからの成長に行き詰まってしまうでしょう。

読者に寄り添って大成功した例もあります。P&Gの洗濯用洗剤『ボールド』もそうでした。

『Mart』読者が望むかわいいパッケージにしたいが、そういうパッケージは店頭でのアピール力に欠ける。2つのデザインはどうしても両立しないと。そこで、『Mart』とタイアップをして、本誌内にラベルの上から重ねて張れるシールをつけたいという話になりました。

それで、いくつかのデザインを作ってウェブで人気投票をして、1位になったものを付録にしました。これを剥がしてボールドのボトルに張ると、洗面所に並べておきたくなるようなかわいいデザインボトルになるのです。これが大ヒットしました。今ではそのヒットを受けてなのか、ボールドはハートをあしらった、カラフルでファンシーなデザインのボトルになりましたね。

こういうタイアップの話はよくあるのですが、途中で頓挫してしまうことも多いのです。そういう中で、どこまで顧客に執着できるか、どこまで企業として向き合えるかです。

クリエーティブに丸投げという企業も多いですが、これまで語ってきたとおり、業界やプロの発想だけで消費者が満足する社会ではなくなりましたし、リアリティがないものは売れない。そういう主婦の価値観に、もう少し注目していただければいいなと思います。

(撮影:尾形文繁)

 

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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