――ビーズ以外にも、主婦主導で流行が作られたものがありますか?
最たるものが、ホームベーカリーです。主婦の方々は、家電メーカーが用意したレシピには、あまり興味を持ちません。そうではなくて、(有名カフェである)DEAN & DELUCAのサンドイッチが作りたいなどと思っている。そんなのお店に行って買ってくればいいじゃないかという気がしますが、そこはもう、理屈を超えているのですね。
ほかにもPAULとかMAISON KAISERとか有名なパン屋さんのパンを自宅で作りたいと思っているわけです。
ブーム初期の頃は、ホームベーカリーのユーザーは外でおいしいパンを買わない人たちで、自分のパンを突き詰める人だと思われていました。でも、ふたを開けてみると違いました。ビーズで市販のファッションアクセを作ってしまうように、ホームベーカリーでPAULのパンを作って、自分の所属するコミュニティで話題にしたい人たちなのです。
――それでは確かに、家庭パン作りの先生などでは対応しきれないでしょうね。
こうなると、われわれは名前が挙がったようなパン屋さんに行って頭を下げるしかない。「無理は承知なのですが、もし仮に、ホームベーカリーでこちらのパンが作れるとすれば、どんな風にすればいいんでしょうか」と。
うちから出しているホームベーカリーのムック本でPAULと表記しているレシピは、自己解釈で勝手に作ったものではなく、本当にそのお店にご協力いただいて作っているレシピなんですよ。
結局、ホームベーカリーに限らず、先生やプロのやり方をなぞるだけでなくて、自分たちで発掘してブレイクさせたという感覚が大事なのでしょう。そうして流行したものは、新たな使い方とか、発展形とか、こちらが新たにカンフル剤を打たなくても、どんどん情報交換されて育っていく。とてもいい消費の形ではないかと思いますね。
雑誌がスタイルを提案する時代の終焉
――お手本になる先生がいないとなると、雑誌作りも手探りという感じになるのでしょうか。
正直なところ、編集部のメンバー全員が明快に「次はこれだ!」と言えるテーマはなく、いつも「なんでこんなものが?」と思いながら、特集記事を作っています。逆に、なぜブームになっているのかを編集部で解釈してから特集にするのでは、鮮度が落ちる。
以前は、「ハマトラ」とか「シロガネーゼ」みたいに、雑誌ごとに読者の特徴を端的に表していましたが、それは古いのではないかと思います。雑誌側が主導して、スタイルを提案する時代ではなくなったのではないかと。
読者の主婦に話を聞いていると、家に人を呼ぶとき、必ずしも仲のいいママ友だけを呼ぶわけではないというんです。場面を使い分けていると。驚きですよね。やっぱり、家族や自分の生活にかかわってくる情報交換は、幅広く行いたいということだと思います。
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