満足した人生には「幸せの感じ方」が重要だ 人生の後半では「芯」を決め軌道修正をしよう

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たとえば、オリンピックで誰がメダルを獲ったというニュースに接しても、それだけでは感動はしません。「へえ、そうか……」と思うくらいです。でも、その選手の背景を知り、その試合を身を入れて観ることで「おお、すごい!」「なんて頑張ったんだ!」と感動する。 小説や映画も、あらすじを知っただけでは感動しません。実際に読んだり観たりすることで、感動が湧く。

感動は、エネルギーを省力化して、結果だけを知るところには起こりません。

自分をかかわらせていかないと味わえないものなのです。自分が感動を味わう機会を減らしていないか、考えてみてください。また、心が動くことがあっても、それを意識化せずにそのまま埋もれさせ、忘れてしまっていないか、考えてみてほしいと思います。

手帳に感動したことを書きとめる

CHECK!② 心が動いたことを、何かに書きとめていますか?

ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどSNS全盛の世の中です。おそらくこの流れは今後も続くことでしょう。私はSNSには、心が動いたこと、感動したことを書くのがいいのではないかと思います。

私は、それを手帳に書き込んでいます。心が動いたことを手短に記しておくのです。

たとえば、バドミントンの世界選手権で奥原希望さんがシングルスで優勝したときは、手帳に「奥原希望さん、祝金メダル!」と書きました。何の所縁もなく、お会いしたこともありませんが、「こんなすごい試合を見せてくれてありがとう」という気持ちで書きとめたのです。スポーツ好きなので、そういう記録はとても多いです。

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観た映画は、タイトルと主演俳優の名前をメモしておきます。タイトルだけではどんな映画か思い出しにくいこともありますが、俳優さんまで書いておくと、すっと思い出せます。心に残るセリフがあったら、それを書いておくこともあります。本の中の印象に残る言葉だとか、テレビで見聞きした秀逸なエピソードなどを書くことも。

その他、「ちょっと気分が上がったこと」があったら、手帳にニコニコマークを書き入れます。たとえば、初めてお会いして対談をした方と意気投合して話がはずんだら、ニコニコマーク。疲れぎみだったのでマッサージを受けに行ったら、施術をしてくれた人がとてもうまくてすっきり爽快になった。これもニコニコマーク。

食事に行ったら、初めての店がすごくおいしくて、「いい店見つけた」という気分になった。これもニコニコです。「これが一個あったから、今日はいい日だった」と考えると、その日の終わりを気持ちよく迎えることができます。

手帳は、日々何度も見るものです。並んでいる小さなニコニコマークは、「この日もいいことがあった」という証、ささやかな幸せの蓄積なので、それが目に入るだけでも、日々の幸福感が上がっていきます。

私にとって手帳は「予定」を書くためだけのものでなく、「今」を記録するもの、自分の時間に小さな幸せを増やしていくものでもあります。

齋藤 孝 明治大学教授

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さいとう たかし / Takashi Saito

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著者、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』(岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『質問力』(筑摩書房)、『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『読書する人だけがたどり着ける場所』(SBクリエイティブ)ほか多数。著書発行部数は1000万部を超える。

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