犬を売らないペット店が岡山で人気の事情 殺処分されてしまう元凶は命の売買にある?

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岡山県では動物愛護団体がかねてより殺処分される犬猫の保護に力を入れており、行政もそれを理解し、処分を減らす努力が続けられてきた地域だという。2016年度の「犬・猫の引き取り及び負傷動物の収容状況」(環境省)によれば、岡山県の返還・譲渡率は84%で全国2位(1位は広島県)だった。

澤木さんにとっては、ブリーダーにより多くの犬が産まれる中、殺処分される犬が後を絶たないことに矛盾を感じていたという(筆者撮影)

この返還・譲渡率とは、収容された犬猫がもう一度飼い主のもとで暮らせるようになった割合を指す。

そうした中、ペットの殺処分という「出口」の問題を解決するには命の売買という「入口」の問題を考えていかなければならないということで、2015年春よりシュシュはペットの販売を止め、無償での里親探しを始めたのだという(同社ペットサービス部総括マネージャー澤木崇氏)。

現在は岡山市内の同店・岡山店と倉敷店の2店舗で里親探しが行われている。両店とも猫は扱っていない。その理由を澤木氏は「猫は運動量が多く、今のケージのサイズでは飼育環境が良好とは言えないから」という。あくまでペット本位の飼育環境を大事にしているのだ。

頭数にこだわらない里親探しの考え方

2015年春からのシュシュにおける里親探し実績は岡山店30頭、倉敷店5頭と予想のほか少ない。ケージが少ないということもあるが、頭数を多くする考えはないという。「平均して1カ月から1.5カ月程度につき1匹のペースで里親が決まっていきます。新しい飼い主候補の方と譲渡前に何度も面談を重ね、譲渡までにじっくりと時間をかけています」(澤木氏)

新しい飼い主が決まった犬たちの写真が飾られていた(筆者撮影)

あくまでペットを売らないペットショップというビジネスモデルをペット本位の環境で行うことに重点があるのだ。

したがって、頭数で考えれば、救われる命はわずかなように筆者は感じたが、前述のように岡山では殺処分を回避するための動物愛護活動が盛んで、行政も臨機応変に対応しているという。地域のそうした動物に対する愛情を感じたからこそ、シュシュも里親探しにシフトしたということのようだ。

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