「ペットの病気」は飼い主をここまで苦しめる もはや「たかが犬猫」では片付けられない
神奈川県の杉山輝彦さん(仮名)は今年2月、推定13歳の雑種猫・ジダン君の様子がおかしいことに気がついた。
トイレで苦しそうな声を上げ、排尿ができていない。いつもはそばを離れないのに、人目につかない家具の隙間に入り込んで出てこない。「尿路結石が再発した」。杉山さんはピンと来た。
7歳以上の猫に起こりやすい病気
尿路結石は猫に極めて起こりやすい病気だ。特に7歳以上の猫では、加齢で内分泌機能の低下や骨量の変化が起こり、シュウ酸カルシウム結石を起こしやすくなる。人間の結石同様に強い痛みがあり、また尿毒症や急性腎不全を起こせば死亡にもつながる。
杉山さんは地元のかかりつけ獣医で尿道にカテーテルを入れるなどしたが、結果ははかばかしくない。「うちでできることはもうない」といわれ、犬・猫の高度医療を専門に手掛ける横浜の病院を紹介された。
そこで提案されたのは会陰尿道造瘻術。ペニスと尿道の細い部分を同時に切除する手術だ。費用の見積もり額は40万円。見た瞬間、杉山さんは妻と顔を見合わせた。「た、高い……」。
しかし杉山さんは手術を決めた。ペット保険に加入しているので全額自己負担にはならないし、完治し二度と再発しないのであれば価値があると考えた。
手術は成功。手術後も膀胱炎のケアなどでかかりつけ獣医に何度も通ったが、8月上旬に「もう完全に治っています。当面は来なくてもいいですよ」と言われ胸をなでおろした。
ただ、この半年でかかった治療費は約100万円(保険対象分含む)に上った。「痛い出費だったとは思います。しかし惜しくはありません。何よりも大事なジダンのことだから」。
ジダン君の年齢が推定なのは、元野良猫だからだ。10年前、杉山さん宅に迷い込んできた。妻と子は猫嫌いで飼うのを反対したが、“反対勢力”が実家に帰省している間にジダン君を家に入れ、既成事実化した。恩義を感じているのか、今でもジダン君は夜必ず杉山さんの布団で寝る。
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