日韓連合が鉱山取得、川上の寡占化に対抗
新日本製鉄、JFEスチールなど国内鉄鋼5社と韓国最大手ポスコは伊藤忠商事と、ブラジルの鉄鉱石生産会社ナミザ社の株式40%を約3120億円で取得した。ナミザ社は鉄鉱石生産量を2008年の1350万トン(予定)から、5年後に3800万トンまで拡大する計画で、今後の拡張コストのうち約900億円も7社で負担する。
これまで鉱山権益の獲得に必ずしも積極的ではなかった国内鉄鋼メーカーが大型権益獲得に走った背景には、鉱石供給を担う鉱山会社の寡占化がある。現在、鉄鉱石の海上輸送量の約8割はBHPビリトン、リオ・ティント(ともに豪・英)、ヴァーレ(ブラジル)の3社が占める。さらに昨年11月、BHPがリオに買収を提案。来年1月にも示されるEUの判断が承認となれば、寡占化は一層進み、川上の発言力が増す可能性がある。今後の原料価格交渉でも鉄鋼側の苦戦は免れない。
08年度、鉄鉱石価格は最大で2倍の値上げとなった。3倍にハネ上がった原料炭と合わせると、業界全体では前期比3兆5000億円も原料コストが増加することになる。
そのため「鉱山経営は本業ではない」としていた鉄鋼メーカーも「今まで以上に(権益を)押さえていきたい」(日本鉄鋼連盟会長を務める新日鉄の宗岡正二社長)と方針転換せざるをえなくなった。
ナミザ出資によって新日鉄は、自社が出資する鉱山からの調達比率を、現在の35%から13年には4割強にまで引き上げることができる。それでもまだ「ボリューム的にはサプライヤーとの交渉で有利にならない」(宗岡社長)が、一歩前進ではある。
なお、今回40%と最大の出資を行う伊藤忠商事は権益を持つ鉄鉱石生産量で総合商社2位だが、首位の三井物産に比べればわずか4分の1。西豪州に集中する権益の分散を図る狙いがある。
もっとも、買収価格は近年のほかの権益取得と比べて割高との指摘もある。鉄鉱石のスポット価格も急落しており「高値づかみかもしれない」との声は参加企業の内部にもある。ただ、鉱山投資は長期間にわたるため、短期的な収益判断は難しい。足元で新興国の鉄鋼需要は減速しているが、中長期では需要増の見方が根強い。今回の権益取得が意義あるものか否かは、時間が教えてくれるはずだ。
(猪澤顕明、山田雄大 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら