統計に出ない40歳以上の「引きこもり」の現実 親の高齢化、8050問題、サポートの壁…
社会や他人に対してSOSを発することが困難なほど、対人関係に怯えるひきこもり。そうなるきっかけは人さまざまだが、
「人生のライフステージをきっかけに起こりうる」
と前出・深谷さん。
「転職先で外様扱いをされたことでひきこもりになった方、離婚や就活の失敗が原因になったケースもあります。非常勤の仕事に就くことができても、親からは終身雇用の価値観をかぶせられ、よりつらくなったりする」(同)
さらに、コミュニケーション力が必要とされる現在の産業構造も、ひきこもりを増やした要因とみる。
深谷さんが続ける。
「今の仕事はコンピューターにはできないコミュニケーション力を要するものが大半。全員が長けているわけではないので、つまずく人は出ます」
長期化、泥沼化するひきこもり。
「ひきこもりの期間が長いとそれだけ、回復するのに時間がかかります」(前出・深谷さん)という。
週刊女性は、立ち直った人に話を聞くことができた。
首都圏在住の40代の牧野達夫さん(仮名)。39歳の年にひきこもり生活に入った。
「きっかけは病気でした。家族性地中海熱という自己炎症疾患なのですが、発症当時はどこの病院でも原因がわからなかった。睾丸に痛みが出たのですが、泌尿器科を回っても、病気が見つけられない。そのうち心身症と診断されて、精神科に回されました」
本来であれば飲む必要のない強い抗うつ薬を大量に飲まされ、大学卒業後ずっと勤務していた福祉系の団体を休職。
「大酒飲みでしたので、薬とお酒で痛みをごまかすような生活が続きました。妻子がおりましたが、離婚しました。駅のホームから飛び込もうとしたところ、駅員に助けられて、警察に連れて行かれて、親が身元引受人になってくれました。そこから私のひきこもりが始まりました」
以前とはがらりと変わってしまった大人の息子の姿に、親も戸惑った。
立ち直りのきっかけ
「父親は腫れ物に触るみたいな感じで何もできず、母親がとにかく叱咤激励してという日々が1年以上、続きました。ただ、それが逆につらかったんです。話ができる状況ではなかったので、クリスチャンの母親は手紙を書いてくる。“あなたはそんな子じゃない”とか“神様は人間をそんなふうにつくっていない”とか」
ただ、親元にいたおかげで3食食べることができ、抗うつ剤や酒を抜くこともできたという。やがて訪れる立ち直りのきっかけについて、牧野さんが続ける。
「母親からの手紙がやんだことです。何も言わなくなった。そこから私自身のエネルギーが湧いてきたんです。区役所に電話をかけて相談をしました。東京都のひきこもりの地域支援センター『ひきこもりサポートネット』に、都から紹介されて電話をしたんです」