取引先への苦情が苦手な人に欠けている視点 憂さ晴らしに過ぎないクレームは無意味だ

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文章とは元来、書き手の人格や人間性が表れやすい表現手段。自分の立場が上のときこそ、文章表現は慎重にしたほうがよいというのは、私の経験からも言えます。気を使わなくてよい相手に対する文章ほど、気を使ったほうがよいというのはひとつの処世訓と思います。

文章術とは、ひとつのコミュニケーション・スキルと言えます。コミュニケーションで決め手となるのは、言うまでもなく人柄、人格です。立場の優位さに乗じて、お里が知れるような文章を書くようでは、文章術以前に解決しなければいけない問題をお持ちではないかと言わざるを得ません。

「丁寧な文章」には書き手の頭を冷やす効果もある

クレームは憂さ晴らしにやるものではありませんし、だれかに文句を言って溜飲(りゅういん)を下げることが目的でもないはずです。こちらの不利益を解消してもらうのが目的であり、クレームはそのための手段のひとつにすぎません。

怒りに目がくらむと、つい目的を忘れ「今日こそは言ってやるぞ!」とクレームに全力を傾けるようでは本末転倒です。これは文章で申し入れるときばかりでなく、電話やメールでクレームを出すときでも同じことが言えます。

文例で見ていきましょう。ある外注先が納期遅れを多発しました。これまでにはなかった頻度です。そのため、こちらの生産計画にもトラブルが生じ、クライアントから苦情が来てしまいました。外注先には納期遅れのたびに、電話やメールでクレームを出していましたが、状況に大きな改善が見られないので文章を送ることにしました。

文例1
<冒頭の定型文や時候の挨拶は省略 以下同様>
この3カ月間で〇〇社さんの納期遅れが続いています。
そのため、当方の生産計画にも著しい支障を来し、クライアントからも苦情をいただいています。
〇〇社さんへ納期厳守を強く申し入れます。つきましては、〇月×日まで具体的な改善プランを提出してください。

まあ、これは普通ですね。

文書というよりはメールで送るレベルと思います。

文例2
この3カ月間に〇〇社さんの納期遅れが何回も起きています。
なにをやっているのですか。
おかげでこちらの生産計画はガタガタで、当社のクライアントから激しい苦情が来ています。
もういい加減にしてください。これ以上納期遅れが起きるようなら、取り引きを止めますよ。本当に納期だけは守ってください!

電話やメールでのクレームをもらうのと、文書でもらうのではもらった側の印象が違います。電話やメールのクレームでも、無視する人はいないはずですが、文書の場合は、さらに重量感があるため、もらったほうは身構えるものです。そこへ感情丸出しの文書が来たら、担当者が怒っている、また困っていることはよく伝わるものの、重量感は皆無です。

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