42歳「社会科見学」に鉱脈を得た男の放浪人生 ミクシィのつながりが思わぬ起点となった

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社会科見学の様子(小島さん撮影)

基本的には、募集があった全然知らない人たちと出かけるのだが、回を重ねるうちに顔見知りも増えていった。

「平日に来る人はちょっと特殊な人が多かったですね。イラストレーターの開田裕治さんなどクリエイター系の人や、会社の社長、女性の割合も高かったです」

そんな社会科見学で知り合ったウェブ制作会社に引き抜かれ転職した。今でいう、VR(仮想現実)作品を制作する会社だった。

仕事は楽しかったのだが、会社は転職して間もなく潰れてしまった。

「再就職しなければ……と思っているタイミングで、僕のHP上の写真を買ってくれる人がいたんです。また社会科見学や地下施設を題材に本にして稼ぐことができました」

小島さんの活動は土木業界の人たちからの注目度も高く、土木・建設にかかわる情報を掲載する総合情報誌『日経コンストラクション』に連載を依頼された。

また、旅行会社の顧問になり「旅行の企画」「コーディネーター」をして稼いだ。

実家暮らしなのもあり、就職しないでもなんとかフリーランスで食べていくことができた。

「町おこしをしたい」

「その頃、地元である春日部の仲間と飲んでる時に『町おこしをしたいよね』って話が出てたんです」

2010年にはNPOを立ち上げようと思い、学校に通った。ただ実際にはNPOを立ち上げるにはいたらなかった。すでにNPOを立ち上げている人々の話を聞く中で自分の性格がNPOの運営には向いていないと感じたからだ。

そんな折、2011年3月に東日本大震災が起きた。世の中、社会科見学どころじゃないムードになった。しかし、半年前から作っていた『社会科見学を100倍楽しむ本』(アスペクトムック)という本の出版をやめることはできず、出版業界のスケジュールの難しさを感じた。

「この本に池島と軍艦島を載せていたんです。本を出し終えてから数カ月して再びインターネットで池島を調べてみたら、『池島で町おこしをしませんか?』という応募が出ているのを見つけました。」

長崎市からの発信だった。今ほど浸透していなかった、地域おこし協力隊の募集だった。池島にはこれまでに取材で2度訪れていて、知り合いもいた。

「池島には地下も工場も廃墟もあり得意分野だらけで、適任じゃないか!って思い立って勢いで行っちゃったんですよね(笑)。住みます芸人ならぬ、住みますブロガーという感じでしょうか?」

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