党首討論は通過儀礼?安倍首相「逃げ恥作戦」 「もり・かけ」疑惑拡大だが野党は決め手欠く

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こうして、国会での与野党攻防が大きなヤマ場を迎えているのに、民放テレビの情報番組などは日本大学アメリカンフットボール部の危険タックル問題一色となっている。党首討論が開催された30日も、午前・午後の情報番組は危険タックルを選手に指示したとされる日大アメフト部前監督と前コーチらに対する関東学生アメリカンフットボール連盟の厳しい処分の話題で持ち切りだった。

このアメフト問題の構図は、もり・かけ疑惑などでの政権の対応と二重写しとなっている。ただ、アメフト問題では第3者機関とも位置付けられる関東学生アメフト連盟が、監督、コーチという権力者側を「除名処分」の厳罰に処し、振り回された選手には復帰への手を差し伸べた。監督らを政権首脳、選手を末端の官僚とでも置き換えれば、もり・かけ疑惑とは真逆の展開ともみえる。このため、永田町では「その落差が国民の政権批判拡大につながるのでは」(自民長老)との見方もある

国会閉幕直後の「3選出馬表明」が首相の基本戦略

法案処理などのため、国会が7月上旬まで延長されれば、首相の総裁選出馬表明も閉幕後まで延びる。すでに石破茂元幹事長は国会閉幕までは意思表示は控えると明言しており、現職閣僚の野田聖子総務相や党3役の岸田文雄政調会長も、国会閉幕までは出馬表明を控えざるを得ない立場だ。その一方で、党内各派閥は9月の総裁選に備えて、例年は8~9月に設定する夏季研修会を、7月中下旬に繰り上げて開催する予定で、国会閉幕後の政局は一気に総裁選一色になるとみられている。

首相サイドは国会閉幕直後の記者会見で首相が出馬表明することで石破氏らの機先を制し、"禅譲狙い"とささやかれる岸田氏もけん制するのが基本戦略とされる。しかし、政権をめぐる疑惑がさらに深まって大混乱の国会閉幕となり、内閣支持率も「支持」を「不支持」が上回る状況が続けば、自民党内での首相交代論にも弾みがつくことが想定される。しかも景気回復に向けたアベノミクスの停滞も、総裁選のカギとなる地方票の行方を左右するとみられている。5月末の国会ヤマ場を乗り切って強気に転じたようにみえる首相だが、今後の展開次第では再びピンチに陥る可能性は否定できない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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