党首討論は通過儀礼?安倍首相「逃げ恥作戦」 「もり・かけ」疑惑拡大だが野党は決め手欠く

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こうした状況の中、自民党執行部は今国会の会期を7月上旬までの3週間程度の中幅延長とする方向で調整を始めた。1年前の通常国会会期末で、野党が徹底抗戦する中、共謀罪法(「組織的犯罪処罰法」改正)を成立させたときのような強引な国会運営をすれば、「野党だけでなく国民の批判も受けて政権危機につながりかねない」(参院自民幹部)との判断からだ。

中幅延長を仕掛けたのは自民党の参院執行部とされ、参院の一票の格差是正のための公職選挙法改正案の今国会成立を大義名分としている。確かに、1票の格差が3倍以上となっている参院の定数是正は喫緊の課題だ。来夏の参院選に是正を間に合わせるためには、周知期間も考慮すると今国会での関連法案の成立が必要となるからだ。ただ、現状では定数是正については与野党が対立しており、関連法案提出は円滑に進みそうもない。

この中幅会期延長については首相サイドが「野党に国会での疑惑追及の場を提供することになりかねない」と不満を漏らしている。野党も30日に「唐突で自己都合だ」として反対することを決めた。このため、最終盤の国会が法案処理のための会期延長をめぐって混乱する可能性も指摘されている。

当面の不安材料は6月10日の新潟知事選

そうした中、首相は6月7日に訪米してトランプ大統領と日米首脳会談を行なうことを決めた。当初の予定通りの6月12日開催が強まる米朝首脳会談に向けて、日朝間の拉致問題の取り扱いなどについて日米間で調整するためだ。首相は引き続きカナダでのサミットに出席して安倍外交のアピールを狙う考えだが、外遊中の国会審議の停滞も自民党執行部の懸念材料ともなりつつある。 

首相らの当面の不安材料は、6月10日投開票の新潟知事選だ。米山隆一前知事が女性問題で突然辞職したことに伴う「出直し知事選」だが、地元の柏崎刈羽原発の再稼働問題が最大の争点で、与党の推す候補と立憲民主など野党5党の推す「統一候補」の激突となっているからだ。

米山前知事は2016年10月の前回知事選で、原発再稼働反対を掲げて与党の推した有力候補に逆転勝利した経緯があり、与党にとっては今回が県政奪還のチャンスだ。ただ、昨年10月の衆院選で新潟は全県的に与党vs野党統一候補の構図となり、自民圧勝の選挙結果とは裏腹に、同県では野党統一候補が自民候補を圧倒した。

今回の知事選でも、事前の情勢調査などでは「与党と野党が互角の戦い」との状況で、「ふたを開けてみないと分からない大接戦」(自民地元選対)とされる。来年の参院選や統一地方選、さらには次期衆院選も想定すると、知事選で与党候補の敗北は、政権への大きな打撃となるのは避けられない。自民党内でも「知事選敗北は首相の総裁3選への機運も薄れさせる」(自民幹部)との声も出る。首相サイドは「地方選挙は国政に直結しない」と予防線を張るが、これも「危機感の裏返し」(同)との見方が広がる。

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