忙しすぎる日本人が知らない「疲労」の4条件 スタンフォードの一流選手は回復を重視する
「多少の疲れは気の持ちようでなんとか乗り切れるだろう」「ちょっと疲れたくらい、大したことではない」と思われるかもしれませんが、疲労は確実にパフォーマンスを下げる難敵です。私がそれを強く実感したのは、バスケットボールチームを担当していたときでした。
ナイキと共同で開発した特殊なウエアを、練習と試合中、選手たちに着用してもらったシーズンがあります。このウエアには特殊な装置が入っていて、選手たちにかかる負荷の量をすべて数値化して計測することができました。
加速や減速、方向転換、着地といったあらゆる動作の負荷を計測したところ、さまざまなことが見えてきました。
たとえば、ある大学との試合に向けて前年以上に練習量を増やしていた時期のこと。数日前から選手たちの負荷は徐々に増え、試合直前にはピークに達していました。これほど熱を入れて練習したにもかかわらず、その試合では20点近い大差で敗北。過去の対戦成績では、スタンフォード圧倒的有利であったにもかかわらず、です。
また、このシーズンは全体的に前年よりも練習量を増やして臨んだのですが、勝率自体は64.8%から50%に低下。個人別の成績で見ても、負荷が増えて疲労がたまった選手は、前日20点も得点したにもかかわらず翌日は3得点のみに終わるなど、調子に波がありました。
この調査から、「疲れた」というのは決して“感覚的な問題”ではなく、実際に体が発している悲鳴であることがわかったのです。
寝不足で「脳震盪」と同じ脳レベルになる
疲れる要因の1つに「睡眠不足」があるのですが、寝不足状態の脳は想像以上に活動レベルが低下していることもわかっています。
「アイトラッキング・テスト」という、小さな黒点を目で追わせることで脳の動きを計測するテストがあり、たとえば脳震盪を起こしたアメフト選手はテスト結果が著しく悪くなります。
スタンフォードでは運動部の全選手にこのテストを義務づけているのですが、水泳や陸上の選手でも「脳震盪を起こしたアメフト選手」と似たテスト結果を計測することがありました。
衝突が少ない水泳や陸上の選手がなぜ、と思って脳外科のドクターにデータを送ると、「この選手はスイマー? なら、睡眠不足かどうか聞いてください」とのこと。
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