20代社員の副業には「誰得」の罠が潜んでいる

管理職が副業を容認する前に考えるべきこと

残るのは、自分にとっての利益がどうか、ということ。会社がどうなろうが構わない。自分の給料がどうなるか、働き心地はどうなるか、という利己的なメリットだけに焦点が当たり、会社の全体最適を考えた協調行動を取ろうとはしなくなります。最終的にシナジーがなくなっていけば、組織の生産性は落ちていくかもしれません。このように、若者の会社や職場への帰属意識の低下は、ある面では業績を下げる要因になります。

では、なぜ若者の帰属意識が低下してきたのでしょうか。ひとつは単純な理由ですが、終身雇用(超長期雇用)がとうに崩壊し、「会社への忠誠心を。最終的には会社があなたのことを守るから心配するな」という会社と社員の心理的契約がなくなってしまったからでしょう。会社はemployment(雇用)を保証するのではなく、employability(雇用される能力)を保証するという方針が多くなってきています。そうなれば、帰属意識も低下するのは当然でしょう。

また、これに輪をかけて帰属意識の低下を促進するのが、いわゆる「働き方改革」です(念のため先に述べておきますと、これからの話は「働き方改革」の否定ではなく、副作用のことです)。「働き方改革」のテーマはたくさんありますが、特に本稿に関係するのは、「残業制限」ではないかと思います。そういうとおそらく「一緒に働く時間が減るから」ということをいうのではと思われるかもしれませんが、私が思うのは別の問題です。

「残業」できない若者が稼げない時代

それはズバリ「おカネ」です。企業の資本のグローバル化が進んだことにより、企業と従業員(もっというと国民)との利益相反が起こっています。グローバル資本は投資先の社員報酬を下げて、利益を上げ配当やキャピタルゲインを高めることが望みであり、人件費は安いほうが良いですが、国家や国民は違います。報酬が減れば、購買力が減り、市場が縮小します。この大きな流れのひとつが「働き方改革」であり「残業制限」です。残業制限とは、少ない時間で同じ成果を出せ(これを生産性向上と言っているわけですが)ということです。

残業制限は、仕事時間が減り、生活時間が増えるため、人間らしい生き方ができる……というようなバラ色な側面ばかり強調されていますが、賃金単価の向上を伴わなければ、単なる賃下げになってしまいます。我々オッサン世代は、基本給は少なくとも、長い残業時間とそれに伴う残業代によっておカネを稼いで、使ってきました。今の若い世代は、「働き方改革」の美名のもとに、稼げない状況になってきているのです。

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