20代社員の副業には「誰得」の罠が潜んでいる

管理職が副業を容認する前に考えるべきこと

そういう事情であるということには証拠があります。エン・ジャパンの2018年の副業に関する調査では、転職サイトを利用している人(つまりおおよそ若手)の半数以上に副業経験があり、その理由として最も多かったのが「副収入が必要だから」で、およそ7割もの人がそう回答していました。次点の「空いた時間の活用」で4割程度、その他の理由はもっと割合が少ないという結果でした。彼らは何も、ポジティブで積極的な理由で副業をしているわけではないのです。

ここからは推測ですが、ふつうに考えて、副業は人間関係や経理関係やスケジュール調整などいろいろ面倒くさい。違う仕事をすることで刺激になり勉強になるというのは事実でしょうが、そんなに意識の高い人は少数派でしょう。

「誰が得するんだよ!」状態になりかねない

さらに言えば、ある程度スキルのある人々はともかく、何らかの能力を一定以上のレベルで獲得しなければならない若手にとっては、本来的にはひとつの仕事に打ち込むほうが、学習心理学的にも合理的です。1万時間の法則ではありませんが、何らかの能力を身につけるには、長期に渡る反復練習が必要なのですから。そう考えると、若者が「副業したい」と言ってきたとき、我々オッサン世代は時代の雰囲気に踊らされて「おうおう、大いにやりたまえ」とか言っている場合はではなく、まず、彼らの処遇が適切ではないのではないか、もっと報酬を支払ってあげなくてはいけないのではないかと検討しなくてはなりません。

また、おカネの問題がどうしようもなかったとしても、能力開発の観点から、本当にその若手が本業と副業にパワーを分散するのが良いのか、アドバイスしてあげることも重要でしょう。そして、さらに副業によって帰属意識も減っていくようでは、まさに「誰が得するんだよ!」状態です。この悪循環はどこかで誰かが断ち切らないといけないと思います。

文:曽和利光/株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
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