断言!「香港の競馬は世界でいちばん面白い」 日本の競馬に「足りないもの」は何か

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ではなぜ、香港人はここまで競馬好きなのだろうか。ワンチャイの中華レストラン「逸東軒」で20年来の友人バーナードに聞くと、こんな答えが返ってきた。「競馬と言わず、香港人は賭け事がみんな好きですよ。香港人はボクも含めて移民や移民の子が多い。移民は毎日の生活が不安だし、あすどうなるのか分からない。そうすると、じっとしてはいられないでしょ。何かを選択し、何かを始める。それこそが賭け。人生そのものがギャンブル、そんなメンタリティーを受け継いでいる」。

バーナードはイギリス留学の経験があり、ニューヨークや東京にも住んだことのある国際派の元銀行員だ。続けて「香港人は馬が好きなんじゃなくて競馬が好き。しかも、もし馬がダメとなったら犬か何か他のものにベットするよ。とにかく香港人は、いい意味でも悪い意味でもおカネが大好きということさ」と笑う。

ファンを飽きさせない「仕組み」「アイディア」が満載

実際、今回改めて馬主席、指定席、パドック、穴場などシャティン競馬場の場内をくまなく歩いてみた。そこで感じたのは香港人のストレートな競馬熱だ。この熱気はせっかちで早口な広東人気質のせいばかりでもない気がした。

日本の場合だと、土曜日はよほど重要な重賞レースでもない限り、強い馬や出世中の馬が登場する特別レース前までは「まったりした時間」が流れる。日曜日でも昼休みを経て、午後ぐらいからじわりと熱が上がり、メインレースでピークを迎えるのがひとつのパターンと言える。しかし、ここ香港では感覚がいささか違う。もちろん、メインで最高潮を迎えるが、1レースからファンのテンションは高く、レースやメンバーの格などは日本のファンほど気にしない。

思えば、私が香港を初めて訪れたのは、中国に返還される前の1992年だ。その直後から日本馬の香港遠征が始まり、1993年のホクセイシプレーの香港ボウルへの挑戦、1995年のフジヤマケンザンの国際カップ制覇という快挙へと続く。これらを実際に目のあたりにしたわけではなく、しばしば訪れるようになったのは2000年代に入ってから。以来、ここ数年は毎年のように香港競馬とマカオでのカジノという”旅打ち”を楽しみにして来たが、どちらも訪れるたびに施設もシステムも洗練されているのに驚く。

グローバル化の成果も出ている。香港が国際レースを創設したのはジャパンカップから遅れること7年後の1988年。IFHA(国際競馬統括機関連盟)による「最新の世界トップ100レース」では日本の12レースに対し、香港は5レースとなっているが、「ロンジンワールドベストホースランキング」のベスト15位以内には、日本の2頭に対し、香港は4頭が名を連ねている。

ファンを飽きさせない工夫も絶え間なく続けている。馬券の種類がどんどん増えてわかりづらいという批判もあるかもしれないが、現在は15種類と多彩だ。1着から4着までを当てる「4連単」、最終レースから数えて6つのレースの1着(もしくは2着になる)馬を当てる「シックスアップ」に、最大6レースの「コロガシ馬券」などなど。

さらに、日によってはどの騎手、調教師が活躍するかを当てる「騎手券」、「調教師券」、さらには「国・地域別券」などまである。棚に商品がたくさん並んでいるのは楽しい。また購入に応じて貯まる「馬券マイレージ」についても、香港はいち早く取り入れていた。もちろん、これらは需要と供給のバランスから生まれたものだが、ことファン目線に立ったアイディア、サービスに関しては、世界の最先端を行っている。

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