断言!「香港の競馬は世界でいちばん面白い」 日本の競馬に「足りないもの」は何か
レース後の総評では大会を主催した香港ジョッキークラブのウィンフリード・エンゲルブレヒト・ブレスゲス最高経営責任者が「世界クラスのG1がどんなものか、この3レースでお見せすることができた」と胸を張り、今回の試みを高評価。日本などの報道陣にまでシャンパングラスを傾け、笑顔をふりまいた。
もちろん手放しで喜んでいるわけではない。この日に行われたG1の3レースとも、実はフルゲートに満たず、海外からの遠征馬も日本から3頭、UAEから1頭のみ(馬主という観点から見ると日本のサンデーレーシング、UAEの王族系のゴドルフィンから2頭ずつだった)。欧米勢は不参加だったことから「もっと国際競争力をつけていきたい」と今後の課題も口にしていた。
それでも今回の試みは大きな一歩になったはずだ。日本はもちろん、欧米、UAE、オーストラリアから多数のメディアが取材し、JRA(日本中央競馬会)、KRA(韓国馬事会)職員も訪れていた。現時点では入場者こそ昨年12月の香港国際競走(9万4560人)に及ばないものの、売り上げ(約238.7億円)では大差がなかったことになる。今後、春の「チャンピオンズデー」は冬の香港国際競走と対をなすイベントとして定着していくはずだ。
日本から参戦した各陣営も、スムーズな運営とホスピタリティー(おもてなし)に深く感じいったようだ。アルアインでクイーンエリザベス2世カップに挑戦した池江泰寿調教師が「諦めません。勝つまでは」と話せば、ファインニードルでスプリント競走に臨んだ高橋義忠調教師も「また来たい」とリベンジを誓っていた。
グローバル化とエンターテインメント性を追求する香港
これほどの熱量を感じると、私は毎年秋に開催されるジャパンカップを含めた、日本の数々の国際レースが「『世界の競馬カレンダー』からどんどん取り残されていっているのではないか」と心配になってくる。そろそろ、前例や伝統にとらわれることなく、レース日程の変更も含めた大胆な一手を打つ時期にきているのではないか(もちろんJRAは売上高では世界1位で、毎年順調に売り上げを回復させている)。
その点、香港競馬は「終始一貫」、グローバル化とエンターテインメント性を高めることで、世界にその存在感を示し、地元ファンの支持を集めている。売り上げは景気に左右されながらも全体的には右肩上がりに成長。2016/2017年シーズンには過去最高となる約1兆7618億円を記録している。これは日本、米国に次ぐ世界3位ながら、単一の主催者としては米国のどの主催者よりも大きく、JRAに次ぐ世界2位。「人口1人あたり」では世界1位だ。
それを支えているのは2つの競馬場とネット投票、それと街中に100カ所ほど点在する場外馬券発売所だ。今回もぶらりと立ち寄ってみたが、香港の「オヤジ連中」はもちろん、主婦やOLまでもがまるで夕食でも買うように馬券やサッカー券などを買って帰る姿を目撃した。それだけ競馬などのギャンブルが市民の娯楽のひとつとして定着しているのだ。7月で終了する2017/2018年シーズンも目下、好調のうちに推移していると聞く。
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