骨太方針から「数値目標」が削除された真意 「3年で1.5兆円増に抑制」はこうして消された

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前述のとおり、2016~2018年度において「歳出改革の目安」という形で数値目標を設けて、それを達成した。

特に、社会保障関係費を3年間で1.5兆円の増加に抑えたことは、好評価がある一方、医療・介護関係者から強い不満が出ている。なぜなら、3年間で社会保障関係費は増やせたとはいえ、予算要求した額から毎年度1500億円前後減らすことを求められたからである。

数値目標を入れる際の経緯は、本連載の拙稿「歳出改革と経済成長は必ず両立できる」に詳しいが、政府与党内ですんなり合意できたわけではなかった。医療・介護関係者やその支持を受けた与党議員は、「3年間で1.5兆円」は厳格な「キャップ(歳出上限)」ではない、と理解して「骨太方針2015」に数値目標を盛り込むことに、最後は同意した。

その後、2016~2018年度において、「3年間で1.5兆円」は、財務省も「キャップ」ではないと認めつつも、社会保障関係費を予算要求から毎年度1500億円前後削減しながら、文字どおりに目標を達成した。厳格な「キャップ」ではないと言いながら、数値目標を達成する形で厳格適用された。

2019年度以降はどうなるのか

では、2019年度以降はどうか。そもそもの見通しとして、本連載の拙稿「75歳以上『後期高齢者』のコストは削減可能だ」でも詳述したように、2019~2021年度の高齢者人口の増加率は、2018年度までや2022年度以降と比べると、かなり低くなっており、社会保障関係費の伸びが鈍化するとみられる。

だから、議論の当初、歳出改革推進論に立つ側からは、2021年度までは「3年間で1.5兆円」の増加でも手ぬるく、その金額以下の増加にとどめるべきだという意見が出ていた。代表的には、経済同友会が5月15日に出した「新たな財政健全化計画に関する提言 ~2045年度までの長期財政試算を踏まえて~」で、2019~2021年度にも、2016~2018年度と同様に「社会保障関係費の伸びを3年間で1.5兆円以下にする」との目標を定めるべきとの主張がある。

しかし、医療・介護関係者やその支持を受けた与党議員、さらには厚生労働省も、「3年間で1.5兆円」では、またぞろ厳しい予算要求の削減を求められるとして、数値目標を設けないよう働きかけた。安倍首相周辺も、今年9月の自民党総裁選で3選が決まれば、総裁任期は2021年までとなるので、2021年度予算までの数値目標で縛られては、政策運営の裁量が制限されるから、数値目標に拘束されたくないという節がある。

では、緩い数値目標ならよいか。というと、財務省は、「3年間で1.5兆円」より緩い数値目標で妥協されては、歳出改革の規律が緩むから、緩い数値目標を設けることには反対である。

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