骨太方針から「数値目標」が削除された真意 「3年で1.5兆円増に抑制」はこうして消された

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目標の達成時期については、2025年度が妥当という見方と、もっと前倒しできるはずだという見方がある。

内閣府が2018年1月に出した「中長期の経済財政に関する試算」(略して中長期試算)では、2020年代に名目成長率が3.5%前後で推移すると見込んだ「成長実現ケース」で、2019年10月に消費税率を10%とし、2019年度以降に追加の歳出改革は行わないという前提で、基礎的財政収支は2027年度に黒字化する試算結果となっている。

同試算では、2025年度の基礎的財政収支は3.8兆円の赤字となっており、2019年度以降こつこつと追加の歳出改革を積み重ねていって、7年ほどかければその程度の赤字は解消できるから、2025年度に目標達成というのは妥当だ。そんな見方がある。

しかし、7年かけて4兆円弱の歳出削減しかしないというのは、歳出改革が緩むのではないかとの見方がある。筆者の推計では、前掲中長期試算と整合的になる国と地方を合わせた歳出(基礎的財政収支対象経費:重複分は除く)は、2015年度に114.9兆円、2018年度に120.2兆円、2025年度に138.9兆円となっている(内閣府からも経済財政諮問会議でほぼ同様の試算結果が示されている)。

この金額によると、前述した「歳出改革の目安」を達成した2016~2018年度で、国と地方を合わせた歳出の増加は、5.3兆円となった(これには地方自治体の歳出の増加が含まれている)。年平均で約1.8兆円の増加である。

これに対して、2019年度以降の追加の歳出改革を行わないなら、2025年度までの7年間で、国と地方を合わせた歳出は18.7兆円増加すると見込まれる。そのまま18.7兆円の増加を認めると、2025年度に基礎的財政収支は3.8兆円の赤字となる。この赤字を歳出抑制で解消するとなると、3.8兆円分の歳出を抑える必要がある。すると、7年間で14.9兆円の増加に抑えればよい。年平均だと約2.1兆円の増加となる。

それは、2016~2018年度のペースより多く増加している。2016~2018年度に「歳出改革の目安」を立てて歳出の増加を抑えることができた。だから、2019年度以降もせめてそれに近いペースに歳出を抑えるべきで、それができれば2025年度よりも前に基礎的財政収支黒字化が達成できる。そうした歳出改革推進論がある。

新計画で数値目標は盛り込まれず?

こうした評価の違いにも起因して、新たな財政健全化計画におけるもう1つの焦点、数値目標について明示できるかが、攻防の最前線となった。

結論から言えば、執筆時点での状況では、新たな財政健全化計画に数値目標は盛り込まないことになりそうである。

数値目標を盛り込まないことは、歳出改革推進論は敗れて、歳出改革は緩むことになるのか。というと、それほど単純ではない。数値目標を盛り込まないことは、何を意味するか。その経緯を追うことで真意に迫ってみよう。

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