人口減少に伴い、わが国では今後就業者数が減ることが予想されている。5月21日に経済財政諮問会議で公表された「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」によると、2018年に6580万人である就業者数は、2025年には6353万人、2040年には5654万人になるという。2025年から2040年までに就業者数は、年率0.8%で減少していく。
東洋経済オンラインの「『人口が減ると経済はマイナス成長』は本当か」(吉川洋・立正大学経済学部教授)でも話題になった人口減少。この現象は避けがたいわが国だが、決して悲観ばかりする必要はない。
人口、特に就業者数が減ると、国内総生産(GDP)が減るという面もなくはないが、むしろ就業者数が減ると労働力が希少になるから、賃金が上がる。これは、経済学の基本から導かれる結論である。
労働者が増えても生産量はそれほど増えない
経済学の初学者は、イロハのイとして、限界生産性逓減の法則と学ぶ。小難しい専門用語はともかく、労働者を次々と雇って生産量を増やそうとして、労働者を1人から2人に増やしたときに追加的に増える生産量は大きいが、100人から101人に増やしたときに追加的に増える生産量はそれほど大きくなく、だんだん小さくなっていくという現象のことである。
確かに、労働者をより多く雇えば生産量は増える。しかし、追加して増やした労働者によって生み出される追加的に増える生産量は、労働者が増えるにつれて少なくなっていく。
労働者を1人追加的に増やしたときに、追加的に増える生産量のことを、労働の限界生産性という。以下では、労働の限界生産性を、簡単に労働生産性と呼ぶことにする。加えて、経済学の基本によると、企業が利潤をより大きくしようとして、最も大きくなったとき、企業が労働者に払う(実質)賃金は、この労働生産性に等しくなる。
さて、これらを踏まえて、就業者数が減少する経済で、賃金は本当に上がるのか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら