「2人の様子を見ながら、何か『形』が必要だな、と思ったんですよね。食事しながら自然に会話ができる雰囲気ならいちばんいいでしょうけれど、当時うちはそういうきっかけもなかった。だったら、この時間は集まって家のことを話そう、という形を作れば、みんなそこに向かえるんじゃないか、と」(繁勝さん)。
みゆきさんの退院後、日曜日の朝食時に、繁勝さんがパワポで作成したアジェンダをもとに、家事分担や家の中で気になることを出し合う、その名も「サンデーブレックファストミーティング」が始まった。
やり方は、まず「チェックイン」と言って、それぞれの「現在の気持ち」を出すことから。「少し眠い」「二日酔いでちょっと気持ち悪い」などどんなことでもいい。そこから、その日のテーマに移る。毎回話すのは、家事分担のローテーション、月の収入報告と来月の目標、家族のための貯金額といったおカネのこと、出張などのイレギュラーな予定の共有など。項目をiPadで見ながら、3人がそれぞれ意見を言う。最後に「気になること」を話し合い、ちょっとした家族の不満や、困っていることなども出し合う、といった流れだ。
意外と息子が嫌がってなかった証拠
イベント的になるように、わざと会社風に会議をしようというこの提案に、はるかくんも乗ってきて、月に一度は近所の「コメダ珈琲」で、iPadを眺めながら、前回からの報告、改善点、今後の予定などを話し合うようになった。
「会議をしようと言ったとき、息子は拒否をしなかったんです。それはやっぱり彼もみゆきともっと話したい、という気持ちがあったからではないかと。彼なりに家族の形を模索していたのかな、と思うんですよね。朝のミーティングは都合がいい機会だったのかもしれません。嫌がってない証拠に、自分から会議の議事録を新聞にまとめてくれたんですよ」(繁勝さん)
議題について話し合い、それをまとめて次の会議で経過報告、というやり方はまさに会社の会議そのもの。でも3人が話し合っているのは、自分たちの関係や家のことを少しずつよくしていこうという思いやりとアイデアの出し合いだった。何を話せばいいかわからない、という状況はいつしかなくなり、会議では日々感じていることや気になっていることを素直に話し合う時間が増えていった。
「最近、自分ばかり家事をしている気がするんだけど」といった家族への苦情も、会議の場では不思議と感情的にならずに済む。「だったらこう解決しよう」という案が提案されるからだ。
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