思春期の息子が心を開いた「朝会議」の効果 突然中1の息子ができた母はそのとき

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「私自身好きなことをして生きてきたように、はるかくんも好き嫌いややるやらないは自分で決めたいのも当たり前。思いを出し切ったらそう思い直せて。気持ちを伝えたら、はるかくんはやっぱり何も言わなかったけれど、私の言葉は聞いてくれて、最後は泣いていました。

そして次の会議で彼は『もっと世界を広げたいから辞めたいんだ』と理由を話してくれたんです。そうか、だったら応援するよって伝えたんです。結局、彼の世界を広げるっていうのは、部活を辞めて本を読みたいから、って、そんな理由だったんですけどね(笑)。それでも、これが親が子どもの考えを尊重するっていうことなんだな、ということがわかった気がします」(みゆきさん)

会議だと親子の関係も「フラット」になる

小6で出会った頃からの写真を見せてくれながら、家族の思い出を語ってくれる中川さん夫妻。現在、息子さんは大学生になり実家を出て一人暮らしをしている。そして中川家の家族会議は、なんと今も継続中。年に1度大晦日に半日かけて年末料理を楽しみながら1年の振り返りをするのが恒例だそうだ。

現在は2人で暮らす中川夫妻。今は息子さんとの家族会議が楽しみに(編集部撮影)

取材中、繁勝さんは何度も「家族会議はただの手段」だと言った。家事分担のローテーションでも、部活を辞めるか辞めないかの話でも、年始にやりたいことの発表でも家族会議の議題は、正直なんでもいい、と。

「たとえば食卓で親が突然、『お前、来年どうしたいんだ。意見を言ってみろ』と言っても反発されるだけですよね(笑)。でも会議だと、親と子、上と下、躾ける側と従う側で話をするのではなく、同じ議題についてそれぞれが自分の意見を話す。だから関係がフラットになります。そうやってしゃべっているうちに、本当に伝えたい家族への気持ちとか、自分の思いとかが自然と表現できるようになると思うんです」(繁勝さん)

「自分自身の親との関係を思い出しても、家族って、気持ちをしっかり出し合う場面って実はあまりないんですよね。機会もないからどうやって話したらいいかわからない。でもうちはずっと家族会議があったからこそ、今、こう思っている、僕はこう、というのが言いやすかったのかもしれないです。客観的になれる場所として、家族会議があったのは良かったなと思います」(みゆきさん)

夫婦、親子、家族の一人ひとりを人間としてみて、尊重し合うというのは、言うほどに簡単なことじゃない。むしろ家族だからこそ、それは時に、難しい。中川家のようにステップファミリーとして家族の形を作っていく必要がないとしても、お互いの感情を理解し、提案や説得ができる家族を目指す。そのために家族会議、という「ツール」は役立つのかもしれない。

本連載「家族会議のすすめ」では、実際に家族会議を行っている方からの情報・質問・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
玉居子 泰子 編集者、ライター

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たまいこ やすこ / Yasuko Tamaiko

1979年生まれ。東京外国語大学卒業後早川書房に入社。主に翻訳書籍の編集を行う。 2005年にベトナムに移住すると同時にフリーランスに。編集・翻訳・ライター業のほか企業通訳を務める。2007年帰国後もフリーで活動を続ける。テーマは、育児・教育、妊娠・出産、育児の悩み、家族のコミュニケーションなど。主な寄稿先は『AERA』、『東京人』、『クーヨン』、『FRaU』、日経DUAL、JBpress、soar-worldなど。過去の仕事一覧はこちら
 

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