米民主党がブチ上げた「雇用保証」とは何か 政府が働きたい人の雇用を保証する大胆策
雇用保証による恩恵は、実際に政府に雇用される労働者のみならず、それ以外の労働者にも及ぶといわれている。インドが試みた類似の制度に関するカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究によれば、同制度によって上昇した低所得家庭の所得の9割が、制度の対象ではない民間部門の雇用にもたらされた波及効果だったという。
長所ばかりのように聞こえる雇用保証だが、もちろん問題点はある。大きく分けると、3つの点が指摘されている。
財源はいったいどうするのか?
第一に、財政への影響である。CBPPの提案によれば、雇用保証には年間で5000億ドル強の財源が必要になるという。2017年度の財政赤字が約6700億ドルであるから、雇用保証を導入すれば、ほぼ財政赤字が倍増しかねない。
雇用保証の支持者は、そこまで正味の財政負担は大きくないと主張する。非自発的な失業者が減少し、低所得者の所得が上昇するため、失業保険や低所得者向けの支援制度の歳出が削減できるからだ。しかし、深刻な景気後退の際には、雇用保証への参加者が想定以上に膨らむ可能性もある。財政負担への懸念は、払拭できない。
第二に、雇用保証が提供する職の種類である。雇用保証の支持者は、インフラ開発や育児・介護等、民間からは十分に提供されていない分野の職を想定する。しかし、雇用保証の性質上、仕事に応募してくる労働者の数は、景気循環に伴って変動する。好景気の時には不要となってもいいような職を、それだけ大量に確保できるとは限らない。
第三に、事務的な能力である。これだけ大規模な制度を円滑に運営するだけの事務能力が、今の連邦政府に整っている保証はない。州・地方政府等もかかわる制度であり、不正や無駄の発生が懸念されている。
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