スマホ、「シャープ好調・ソニー不振」のワケ 「日の丸」スマホメーカーは生き残れるのか

拡大
縮小

シャープがスマホの拡大に力を入れる背景には、アップルとの関係もありそうだ。今年発売される新型iPhoneには、シャープではなくジャパンディスプレイ製の狭額縁液晶パネルが採用される見通しだ。「(空いてしまった)生産キャパを埋めるため、自社スマホ向けの出荷数を増やさざるをえない」(市場関係者)。

シャープはアップルに液晶パネルやカメラ部品を供給しており、その金額は売上高の約25%にあたる5420億円に達する(2016年度)。かねて「最大顧客への依存度は縮小させていく」(野村勝明副社長)姿勢を打ち出しており、自社スマホの再成長戦略はそれを占う試金石となりそうだ。

ソニーが撤退しない訳

一方、低迷に歯止めがかからないのがソニーだ。2017年度のスマホ事業は売上高が約5%減の7237億円。工場の減損も行い、276億円の赤字に沈んだ。競合メーカー幹部は、「ソニーはとにかく収益改善が第一。開発費も削減しており、製品を大幅に刷新する余裕がないのでは」と見る。

ただ、スマホ事業担当役員だった十時裕樹CFO(最高財務責任者)は、次世代通信規格である5Gの時代が到来したときに向け、「社内に研究開発拠点を持っておく必要がある」と説明。

ソニーは、「プレイステーション」や「アイボ」などでもキャリアー回線を利用しており、スマホ事業を続けることで、キャリアー各社との関係性を維持したいのが本音だ。

現在は安価な中華系スマホでも高機能化が進み、性能での差別化が難しくなってきた。“絶滅危惧種”の日系スマホが生き残ることはできるのか。

印南 志帆 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT