スマホが脳の発達に与える無視できない影響 脳トレの川島教授が2つの実験結果から分析

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実験の様子(筆者撮影)

私たちの脳は、活発に働いている場所に酸素や栄養を送り込むときにたくさんの血液を流している。裏を返せば、血流量が多い脳の部位は、それだけ活発に働いているということになる。

NIRSとは、近赤外光と呼ばれる光を頭の上から脳に向かって照らすことで、大脳表面の脳の働きを調べることができる装置だ。超小型NIRSから出た近赤外光は頭の皮膚や筋肉、骨を通過して脳に到達する。そして、どれだけの近赤外光が戻ってくるのかをセンサーを用いて測定することによって、通り道にどれだけ血液があったのかを計算することができるというわけである。

実験の結果は以下のとおりだった。

(出所:筆者研究データ基に筆者作成)

このグラフは、少し難しい言葉、一例として「忖度(そんたく)」という語の意味を紙の国語辞典で調べたとき(上)と、スマホを使用しウィキペディアを閲覧して調べたとき(下)の前頭前野の活動を比較したものだ。上も下も同一人物の脳活動を表している。青は大脳左半球の前頭前野の活動、赤は右半球のものを示す。

被験者は、実験開始時は眼を開けたままボンヤリとしている。そして、「始め」と言われた時点から意味調べを始め、「やめ」と言われたところで行動を終了する。赤の矢印で示した区間が意味調べを実行している時間(約53秒間)である。

作業効率がいいのはスマホ使用時だが…

国語辞典を使用した際には、時間内に3つの言葉の意味を調べることができた(黒の矢印①~③で示した部分)。一方、スマホを用いると5つもの言葉の意味を調べることができた(黒の矢印①~⑤で示した部分)。スマホを使ったほうがはるかに効率的だ。

しかし、前頭前野の働きを見比べてみると、結果は驚くべきものだった。国語辞書を使っているときは、左右の大脳半球の前頭前野は活発に働いているのに、スマホを使うと、まったく働いていないことがわかる。

さらによく見れば、脳活動を示す線は、大脳の左右半球とも、ボンヤリしているときよりも少し下がってしまっている。スマホで言葉調べをしているときには指先も使っているし文字だって読んでいるのに、前頭前野はボンヤリとしたままなのだ。

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