オジサン化するオバサンを待ち受ける「孤独」 マッチョな企業文化が「つながり」を阻害する

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今、英国をはじめ、世界の多くの国で「孤独」が政治的にも大きな問題になっているが、日本も例外ではない。いや、むしろ日本は世界に冠たる孤独大国だ。

少子高齢化、過疎化、都市化、核家族化による地縁・血縁の消滅、無縁社会は世界的な傾向だが、特に、日本の場合、独特の会社文化が「孤独化」に輪をかけているようなところがある。会社とは、「鎧を着て、剣と盾を持って戦うところ」と、あるサラリーマン男性が言っていたが、その小さな競争社会の中では、なかなか腹を割って話せる友人などできないし、社外の人とつながる機会もなかなかない。

学生時代、たった数年一緒に過ごした友人のほうが、何万時間も共にする上司や同僚、部下よりも気心が知れ、つながりやすい、という矛盾がある。

心理学に、「何度も繰り返して接触することにより、好感度や評価等が高まっていく」という「単純接触効果」というものがある。広告などで繰り返し同じCMなどを見せるのは、消費者の脳裏にいい印象を擦り込もうとするためだが、やはり、多くの時間を過ごせば、人と人との関係性は深まりやすい(逆パターンもあるが)。

米カンザス大学のジェフリー・ホール教授は、どれぐらいの時間を一緒に過ごせば友人になれるかの実験を行った。導き出されたのは、単なる知人から軽い(カジュアルな)友達になるには50時間、友達になるには90時間、ベストフレンドになるためには200時間かかるという結論だった。

会社では友人関係が生まれにくい

会社では、きっとそれ以上の時間を一緒に過ごしているはずだが、そこで、友人関係が生まれるという話はなかなか聞かない。

ホール教授曰く、「ただ一緒にいるというだけではなく、意味のある本質的な会話、コミュニケーションができるかが、人間関係の結びつきに大きく影響する」と指摘しているが、職場は、そうした心の結びつきを形成するコミュニケーションが生まれにくい環境ということだ。

会社は、人の競争心を巧みに操り、お互いを競わせる排外的なムラ社会、という側面がある。人生の莫大な時間を吸収していながら、絆を生むコミュニケーションが生まれにくい。まさに、「孤独養成装置」のようなものだ。

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