人は出世するほど、プライドが積み上がり、共感力を失って、孤独になりやすいという傾向があると言われているが、実際に、女性も、出世するにつれて「オス化」するということはいくつかの研究で実証されている。ミシガン大学アン・アーバー校の研究では、「上司らしくふるまうこと」は女性の男性ホルモンを平均で10%上昇させたという。
さらに、アントワープ大学の研究によれば、「非幹部職の女性は、『協調性が高い』など、女性の特質的な傾向を示したのに対し、幹部職の女性は、『自己主張をする』といった男性と似た特質を示した」という。「幹部職の男性と非幹部職の男性との間では、特徴・特質的なものに大きな差はなかったものの、幹部職の女性と非幹部職の女性との間の差は男性よりも大きかった」ということも明らかになっている。
つまり、男性優位のコーポレートカルチャーの中では、女性が男性のやり方に合わせていかざるを得なかったということだ。女性たちは、ある程度の「オス化」を受け入れて、会社の中での生存競争を生き抜く術を学んできた。
元気に活動しているご婦人方は専業主婦出身
一方で、高齢者の集会などで、元気に活動しているご婦人方は、趣味にボランティアに、スケジュール帳を真っ黒にして飛び回っているが、聞いてみると、専業主婦だった、パートをしていた、学校の先生など専門職だったという人が多い。会社の出世競争や序列文化とは無縁に、子育てをしながら、母親同士のネットワークを広げ、習い事をしながら、フラット(水平的)で協調的な関係性を築いてきた。そうしたつながりを作る機会を持ちにくいバリキャリ女性たちは、男性同様に「孤独」リスクに直面する可能性がある、ということだ。
女性の活躍やウーマノミクスだのと喧伝されているが、社員に男性優位の会社制度に適応することだけを求めるのではなく、本質的にマッチョで、孤独を生みやすい企業文化を変えていく必要もあるのではないだろうか。
多くの人がふるさとを離れ、地縁・血縁が薄れていく一方で、新しい「縁」の受け皿となるべき「会社」は人々の多くの時間を吸い上げているにもかかわらず、友情や意味のある関係性が生まれにくい環境になっている。
人生100年時代、大学を卒業するまでの第一ステージ、会社員としての人生が第二ステージ、退職後を第三ステージとすれば、この第二ステージが最も長いスパンにわたる。この間に、会社はただ、「やりがい」だけを搾り取るのではなく、社員の「つながり」を作る力を養い、第三ステージに備えるマインドセットを醸成していくべきではないだろうか。
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