「東京ドーム主催試合」で西武球団が得たもの 40周年記念事業での開催で来場者数は最多に

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初の東京ドーム主催試合の狙いを西武ライオンズの井上純一事業部長は「大きく3点ある。まず40周年事業としてファンの記憶に残るイベントを実施して球団史に刻みたかったということ。次に平日にメットライフドームに来場できない層や、何らかの事情で離反ファンとなってしまった方々に対してアプローチする機会を創出させること。

そして、ライオンズが培ってきた事業活動が東京ドームというポテンシャルの高い立地でどこまで実力を出せるのか、チャレンジングな目標を設定することで社内の士気を高めるとともに、その実績を評価して今後のマーケティングに生かすこと」と説明する。

都内でパ・リーグ球団を観戦できる数少ない機会

楽天やロッテ、ソフトバンクなどの西武以外のパ・リーグ他球団も東京ドーム主催試合を行っており、いずれの試合もチケットはほぼ完売してきたという(『東京ドームのパ・リーグ試合が超人気のワケ』2016年7月24日配信の記事を参照)。

日ハムが2004年シーズンから本拠地を東京ドームから札幌ドームへと移して以来、東京に本拠地を置くパ・リーグ球団がなくなったため、東京ドーム主催試合は都内でひいきチームのホームゲームを観戦できる数少ない機会を提供している。

試合終了後の東京ドーム。平日の雨の中にもかかわらず多くの西武ファンが足を運んだ(筆者撮影)

また、東京ドーム主催試合は埼玉県における西武沿線以外の地域でのファン層拡大につながるメリットもありそうだ。

たとえば、埼玉高速鉄道沿線からは東京ドームの最寄り駅である後楽園駅まで直通で来ることが可能。東武伊勢崎線・日光線沿線からは、東京ドームまで徒歩圏内の神保町駅まで直通運転している。

いずれの沿線もメットライフドームよりも短い時間で東京ドームへアクセスできる。西武沿線外地域でのファン層拡大のために、今後も東京ドームを含むさまざまな球場での試合開催を検討する余地は大きいと考えられる。

西武ライオンズは、40周年記念事業によるメットライフドームのボールパーク化と併せて、ファン層拡大と観客動員数増加につなげるため今シーズンもさまざまなイベントを実施していく予定だ。同球団の井上純一事業部長は「この夏の大型イベント『ライオンズフェスティバルズ2018』において沿線地域だけでなく、埼玉県の各自治体やスポンサー企業などさまざまなステークホルダーと一緒にライオンズを盛り上げていきたい」と意気込みを語る。

今後も、西武は観客動員数増加を実現するために多彩なアイデアを企画し、実行に移す必要がある。そして、ファンと本音で議論する機会を設け、ファンのアイデアを取り入れることがより球場に足を運んでもらうために大切かもしれない。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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