日本人が知らないシリア難民の超過酷な現実 子どもたちのために危険を承知で海を渡る
松永:そうですね。インフラは整備され、学校は増え、病院も増え、環境は良くなったけれど、結局6年経ってもやはり、子どもを取り巻く環境、もしくは子どもにその先待っているであろう環境は、現状としてそれほど変わっていないんですね。それはなぜかというと、親御さんの仕事の関係とか、キャンプの環境がそうさせるというところが大きいです。1年生だった子が7年生まで学校に来ることはできているけれど、その先に勉強して大学に行けるのかというと、結構な子がそうではない。8、9年生くらいになると、本当は結婚全然したくないんだけど親がしろと言うからと早婚した子ども、「うちはやっぱりお金がないから外に働きに行く」と言う子どもが、今でもたくさんいます。親御さんの仕事が見つからなかったり、親御さんが戦争で障害を抱えて働けなかったりと、泣く泣く子どもに勉強を諦めて働いてもらうということもあります。キャンプの中にいても、学校に行き続ければ勉学を使った次のチャンスに繋げることができるはず。勉強は、特に難民の人たちにとってすごく大事な武器に本来なるはずだと考えています。
堀:生きていくため、自分の未来をもう一度作っていくための1番の技術ですよね。
新たに取り入れたキャリア教育
松永:今学校に行っている子どもたちの勉強を続けるモチベーションを高めてあげようと、2017年9月からキャリア教育を実際に始めてみました。例えば、5年生の子どもたちには、自分の知っている職業を描いてみようと。警察官や絵描きさんを描いている子がいました。
また、6年生ではもう少し具体的に、なりたい職業を描いてみようと。薬剤師さんと看護士さんになりたいと描いている子がいました。やっぱりそれでも、教員、医者、看護師が相変わらずトップ3。