日本人が知らないシリア難民の超過酷な現実 子どもたちのために危険を承知で海を渡る

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タカハシ:お金はどのように稼ぐんですか?

松永:例えば、KnKが行っている教育事業で先生をしてくださっているシリア人の方々には、私たちがお給料を出しています。

:私たちのKnKへの寄付が、先生方のお給料を支え、そして子どもたちが学べるということに繋がっているんですね。

松永:はい。昨年6月の「伝える人になろう講座」でご寄付をいただいて以降、先生の人数は3分の1に削らざるを得なかったのですが、何とか1年事業を継続することができました。ただ、全く雇用が世帯にない家庭もあり、キャンプ内でも格差が出てきています。基本的にキャンプにいる人たちへは、例えばフードクーポンのようなものは今も支給されています。

タカハシ:ヨルダンは難民キャンプを認めているんですか?

松永:政府がどこまでの意図を持っているのかは分かりませんが、大掛かりな工事をするということは、ある程度の期間難民の皆さんがいることを前提としてしかやらないでしょうから、それは認めているんだと思います。

難民の子どもたちの未来を支える

松永:KnKのヨルダンでの事業は2013年頃から始まりました。キャンプ内の公立校1校で、音楽、演劇などの授業を提供しています。公立校の先生たちにアンケートで子どもに必要なニーズを訊き、可能な限り授業に取り入れることもしています。今期は生活指導を取り入れました。事業を始めた当時は、戦火から逃れて来てすぐだったので、すごくストレスやトラウマを抱えていました。子どもだけでなく、親御さんも抱えているので、家庭の環境も悪くなりました。しかもお金がなく、お父さんも仕事がなく家にいる状態で、「学校に来てもおもしろくないけど、家に帰っても大変」という家庭も。そういう状況の中で、それでも学校に行くモチベーションを作ってあげたいなというところから、私たちの事業は始まっています。

生活指導に用いたイラスト©︎国境なき子どもたち(KnK)

:学校に行くのが楽しくなる、学校が居場所になれるような環境を整備するということですね。

松永:はい。私たちの事業をいくつか紹介します。音楽の授業では、先生がメロディを弾いて子どもたちが音階を歌うということもしています。音楽を教えているのは、自身も難民であるシリア人の先生です。彼女は元々音楽のスキルは持っていたのですが、短大卒業程度でした。しかし、KnKで3年くらい働き、最近では授業に使えるようなトレーニングを自主的にやってくれています。また、演劇の授業では、子どもたちの近くにいる人たちをよく観察して真似をするという感じで進めています。レポーター体験をしたこともありました。

©︎国境なき子どもたち(KnK)

:授業を通して様々な職業を学ぶこともできそうですね。ちなみに昨年6月の「伝える人になろう講座」の際に、「難民の子どもたちの将来の夢の選択肢がとても狭い」という課題を共有していただき、アイデアを出し合ったんですよね。難民の子どもたちに「なりたい職業は何ですか」と聞くと、1位が先生、2位がお医者さん。一見立派だなと思われがちですが、実を言うと、子どもたちが日頃接している大人の職業が、先生か医者くらい。世の中にはいろんな職業があるという想像が、小さい頃から難民キャンプにいるとなくなってしまう。選択肢を広げるためにも、「いろんな職業があるんだよ」という話をしたらどうかというアイデアが出たんですよね。

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