日本人が知らないシリア難民の超過酷な現実 子どもたちのために危険を承知で海を渡る
堀:他に問題はありますか?
松永:はい。特別支援が必要な子どもたちも結構たくさんいて、サポートがないと授業についていけないことも。しかし、特別支援の施設を持っていた大きな団体さんがユニセフ経由の資金をカットされ、運営していたセンターが閉鎖されてしまいました。
堀:資金を切り上げるという判断が、直接子どもたちに影響を及ぼしているんですね。
松永:はい。こういうところに如実に出ています。20箇所以上あったキャンプ内のセンターが一気に閉まって、再開の目処も立っていません。内戦がここまで長期化し、「ずっと資金を調達し続けるのも無理だよ」という団体さんがどんどん出てきてしまっています。
子どもたちの心に大きなダメージ
堀:このような環境の中で、子どもたちに何か変化はありましたか?
松永:はい。アハマド・アイッサくんは、いつも教室の外で疾走しています。「シリアでは学校が大好きだった」とお父さんが言っていました。でも、学校に来ても授業に出たがらない。最近インタビューをしたら、「すごい勢いで先生に暴力を振るわれたり、自分のせいじゃないのに自分のせいにされたりすることがたくさんあって、そういう先生の授業には出たくないから外に出ているんだよ」と。兄弟も多いから、なかなか親御さんも「『学校に行け』としか言えず、学校でどうしているかは把握しきれない」と話していました。
ハサンくんは14歳で、本来ならば8年生に入るのですが、まだ5年生。楽観的で、「学校大好き」と言ってくれるのですが、やはり彼もダブっているのもあり、何かあったら絶対に彼のせいにされてしまう。「学校の授業は好きだけど、先生は好きじゃない」と言っていました。
ムハンマドくんは、耳は聞こえるのですが、発音が苦手。学校の授業の中でもアラビア語の授業はお手上げ。授業がつまらなくて、ついKnKの職員室などに来てしまいます。KnKの授業は5年生からなので、2年生の彼は関係ないのですが、誰も助けてくれる人がいないので、KnKの先生が手の空いた時に指導しています。「学校の間は教室に行きなさい」と戻すのですが、公立学校の先生も「僕たちが言っていることに対してあんまりリアクションがないから、もう外にいてもいいんだよ」と言ってしまうんです。誰も彼にきちんとした指導ができないという状況です。支援の断ち切りもあり、フォローする側がきちんとしたスタッフを送れていないという結果、こういうことが起きています。
子どもたちが相談をしたいときに、「親でも親族でもないけど信頼できる大人の相手」になれているというのが、KnKの先生の存在の意義でもあります。そういう存在を子どもたちから奪ってしまったら、子どもたちの逃げ場がなくなってしまうんだろうなと最近感じています。
堀:実際に淡々と子どもたちの日常の支えていくという支援を行っている団体が、こうしてあるんですよね。それを知ることが、まずは大切なんじゃないかなと感じます。
松永:地味なのですが、継続をしていくということに今後も注力を注いでいきます。
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