筆者は3カ月前からの状況変化として、円高圧力が意識されており、日銀の4月『展望レポート』の「分析BOX」には円高に絡むものがあると予想している。たとえば企業の円高耐久力(海外の売り上げ増加で収益を賄う)を説明するものや、かつての輸出主導の貿易黒字ではなく所得黒字による経常黒字拡大であれば従来よりも円高圧力が軽減することを示す、などが考えられる。
参考になるのは12日の日銀支店長会議後の衛藤公洋・大阪支店長の発言である。日本企業は「2~3年前に比べて円高に対する抵抗力が確実に強まっている。1ドル120円程度の頃よりも、昨年度は高い収益を上げており、収益力は着実に高まっている」「105円程度ではおそらくビクともしない程度の強さを持っていると思う」と述べていた。内閣府の企業行動に関するアンケート調査(2018年1月調査)では、輸出企業(大企業)の採算レートは、100.60円だった。円高圧力への警戒感は必要かもしれないが、日本企業の円高耐久力はついており、先行きの日本経済に極端に悲観的になるべきではないだろう。
若田部副総裁は現状維持「賛成」に回ると予想
以上より、緩やかな景気回復は続くとみるが、円高や保護主義の強まりへの懸念もあり、企業は先行きに慎重姿勢を崩すことができないだろう。全国2月のコアCPIがエネルギー関連の押し上げのもと前年比プラス1.0%をつけたが、コアコアは同プラス0.5%とまだ上昇力が鈍い。企業の価格転嫁は十分には進んでおらず、インフレ期待が高まる状況にはない。秋口までコアCPIは1%前後の動きが続くと見込まれるが、その後に上昇加速する要因が見当たらない。むしろ円高による下振れリスクが懸念される。日銀は緩和のストック効果に期待し、当面は様子見となるだろう。
26~27日開催の日銀金融政策決定会合では、これまで通り、片岡剛士審議委員が反対票を入れ、8対1での現状維持を予想する。市場では、若田部昌澄副総裁に対して警戒感もあるようだが、審議委員と執行部の副総裁では明確に立場が異なる。最初の会合で副総裁が異を唱えることはないとみる。日銀の金融政策をより長い目線で考えると、声明文に明記された国債買い入れペース年間「約80兆円めど」という文言を削除する時が、政策の微修正に向けての第一歩となるだろう。為替市場の反応に神経質になりながら、マーケットに対してサプライズとならぬようにメッセージを発しつつ、長い道のりのなかで緩やかな地均しを模索していくと予想する。
※本連載は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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