トランプ大統領は3月1日、鉄鋼製品とアルミニウム製品の輸入に対する追加関税を発表した。鉄鋼製品には25%、アルミニウム製品には10%、それぞれ関税を課すこととしている。当然、国際社会からは批判の声が上がっており、中国やカナダ、欧州などは既に報復措置の検討に入っている。報復関税の応酬となるような、いわゆる「貿易戦争」への警戒感から、同日の米国株価は急落。NYダウは400ドルを超える下落となった。
この反応を受けて、トランプ大統領は2日、むしろツイッター上で火に油を注ぐようなツイートをした。「米国がすべての国に対して巨額の貿易赤字を出している状況では、貿易戦争はよいものだ。簡単に勝てる」「例えば特定の国と貿易収支が1000億ドルの赤字で、その相手が生意気なら貿易をやめればいい。我々にとって大きなプラスになるし、簡単なことだ!」
米国が貿易戦争を仕掛ける場合、約2700億ドル(2017年)と、ケタ違いの対米貿易黒字を誇る中国が最大の標的となるはずだが、今回の状況はやや異なっている。米商務省国際貿易局の調査によるトップ10の鉄鋼輸入相手国では、中国はランキング外で、むしろ日本が7位にランクインしているのだ。
追加関税であって「ドル安政策」ではない
日米間は、特に安倍首相とトランプ大統領の友好関係が際立っているため、米国政府は日本にとってマイナスとなるような保護貿易は行わないと市場はみていたようだ。しかし、振り返れば1980年代にロナルド・レーガン元大統領と中曽根康弘元首相が「ロン・ヤス」関係と呼ばれる信頼関係を築いたにもかかわらず、その後日米間の貿易摩擦が激化したというケースもあった。結局、1985年にはプラザ合意に至り、ドルは大暴落した。それでも日本の経常黒字は減らず、1988年には米国側が一方的に不公正貿易国を認定し対抗措置を講じられる、「スーパー 301条」の成立に至った。
ちなみに、現在米通商代表(USTR)を務めるロバート・ライトハイザー代表は、1983~1985年の日米貿易摩擦の最中に、レーガン政権でUSTRの次席代表を務めており、当時の日米貿易摩擦で日本に鉄鋼輸出の自主規制をのませた人物である。こうした点を考慮すれば、米国の保護主義を甘くみてはいけないのかもしれない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら