つまり、既にグローバル化が進んだ世界経済において、世界貿易摩擦に勝者は誰もいないのである。EU(欧州連合)が計画している報復関税の対象品目が、バーボンウイスキーやピーナッツバター、オレンジジュースなど、経済規模に対して影響の少ない、限られた品目にとどまっているのはそのためだ。
米国のゴルディロックスはまだ継続している
今後も、2018年11月に予定されている中間選挙をめぐり、米国の保護主義の強まりなど、政治要因に為替相場が振り回されることはしばしば起こり得る。特に、トランプ大統領の経済顧問トップであるコーン国家経済会議(NEC)委員長の辞任は痛い。同氏は自由貿易論者で、報道によれば今回の追加関税に反対して辞任したようである。これを機に、トランプ政権で一貫して保護貿易を主張してきた国家通商会議委員長のナバロ氏の存在感が増す可能性もあろう。同氏は北米自由貿易協定(NAFTA)や米韓自由貿易協定からの離脱を支持している。
しかし、マクロ経済に立ち返れば、米国をはじめとする世界的な景気拡大は変わっていない。3月9日に発表された、2月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が31万3000人と、市場予想の28万人を大きく上回る好結果となった。一方、平均時給は前年比2.6%と、伸び率は市場予想の同2.8%を下回っており、賃金は上昇しているものの、伸びは緩やかにとどまっていることが確認された。米国のゴルディロックス(=適温経済)が続くなか、ボラティリティーは低下し、徐々に市場参加者の関心は日米の金利差拡大に向かうだろう。したがって、こうした政治要因によるドル安・円高は一時的なものにとどまるとみている。
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