トランプ・ショックの円高は長くは続かない

勝者不在の貿易戦争の行方は?

しかし、それでも「貿易戦争」を巡るドル円の下落は長続きしないとみている。

その理由としては、第1に、今回の措置は「追加関税」であることが挙げられよう。「米国の保護貿易」というと、すぐに上述したプラザ合意が頭に浮かび、「ドル安政策」が連想されるためにドルは売られやすい。実際、今回もこの報道があった3月1日~2日にかけて、日本銀行の金融緩和からの「出口戦略」をめぐる市場参加者の思惑と相まって、ドル円は107円台から105円台まで下落した。ただ、トランプ大統領が明確なドル安政策に打って出たのならいざ知らず、関税の引き上げは、「米国の輸入物価上昇→インフレ→米国の長期金利上昇→ドル高」と、マクロ的にみればドル高の材料となりうる。

第2に、今回の関税引き上げの品目は鉄鋼製品とアルミニウム製品に限定されており、本件が米国経済、および世界経済に与える影響は軽微にとどまるとみられる。関税引き上げによって個人消費が減速し、「米国経済の腰折れ→米長期金利低下→ドル安」との心配は杞憂に終わろう。

世界的な貿易戦争に発展する可能性は低い

第3に、本件がそもそも世界的な貿易戦争に発展する可能性は低い。今回の米国の措置が、各国の報復関税などの報復措置につながり、もし世界的な貿易戦争に発展するとすれば、世界経済にとって著しくマイナスになるのではないか、との見方もある。しかし、実際には世界的な貿易戦争は、誰にとってもメリットはない。貿易黒字国にとっては、貿易相手国の関税引き上げによって輸出が減少するためマイナスとなるのはもちろんだが、貿易赤字国にとってもメリットばかりとはいえない。特に、関税引き上げや通貨安政策などは、物価の上昇をもたらし消費を圧迫する。

また、これまでのグローバル化によって、企業間のボーダレスな取引が活発になっている点も重要なポイントだ。経済産業省の調べによれば、例えば在中国の米国企業現地法人による米国への輸出額は、2014年時点で153億ドル、シェアは同年で10.0%となっている。また、グローバルに活動している米国の多国籍企業にとって中国は重要な拠点となっているために、中国が売上、利益、米国との輸出入において上位3~4位に入っているのであって、米中の貿易摩擦が悪化すれば、米国企業にとってもマイナスの影響が及ぶ可能性が高い。

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