「『パパ活』はおカネを必要としている女性が援助してくれる男性を探すという設定を入り口としたラブストーリー。その『パパ活』の総再生回数が伸び続け、トレンドを作ることができたので第2弾の企画を考え始めました。どうせやるなら、『パパ活』の発展形で、今度は女性のほうがおカネを援助するといった設定のストーリーはどうかと、同じチームで作り出されたのが『彼ロン』です」
総再生回数の数字が全話配信後も伸び続けることは珍しいそうです。「それまでは総再生回数のピークは配信から約1カ月後と見られていましたが、『パパ活』は全話配信した翌月にピークを迎え、結果、総再生回数を大きく伸ばしました。これは通常の恋愛ドラマと違い、男性の視聴が全体の40%を占めていることも起因しています」(上田氏)。
「ブラック」と「ポップ」をうまく取り入れる
そんな成功体験から『彼ロン』が制作されたわけですが、実は野島ファンが期待するようなサスペンス感はありません。清水氏は野島氏にあえて「“ラブ”は“ラブ”でも、今までにはないラブコメにしたい」と話したそうです。「殺人NG」となった結果、アイドル出身の真野恵里菜と、イケメン俳優の象徴である元仮面ライダー、横浜流星による月9(月曜夜9時枠)のようなポップな展開が繰り広げられています。重要な役どころで長谷川京子も登場します。
真野が演じる主人公・浮島多恵はエリート彼氏と結婚をして専業主婦になるという夢を持つ、大企業の受付嬢です。それをかなえるために「猫かぶり」を徹底しますが、どうしてもストレスを覚えてしまう。そこで、発散用に月額3万9800円のローンで彼氏を購入します。その「ローン彼氏=刹那ジュン」を横浜が演じています。「人身売買」というブラックな設定から始まる、主役2人の心模様がテンポよく、ラブコメタッチで描き出されていきます。
「ブラック」と「ポップ」、この2つの要素をうまく取り入れた演出がこのドラマの見どころの1つです。女が男を買うという「人身売買」だけでなく、女が男を殴る「暴力」シーンも満載です。地上波ドラマだったら、そのシーンに焦点が当てられ、ネット上をザワつかせてしまいそうです。でも、このドラマは不快感よりも、むしろ視聴者も一緒に「ストレス発散」ができるような共感へとうまく運んでいきます。それはなぜでしょうか。
「地上波のドラマも手掛けてきましたが、殺人事件はよくて、行きすぎた暴力がタブーと考えてしまうのは、視聴者の受け取り方を意識しすぎて、躊躇してしまうからではないかと。地上波は自分たちでタブーのハードルを上げてしまっているのかもしれません。『彼ロン』では段ボール箱で“ローン彼氏”が運ばれてきます。台本の段階ではその表現は適切なのかどうかと、制作陣の中で議論もありましたが、私は止めませんでした。配信だからなんでもかんでもいいということはないですが、いろいろな表現の仕方で、もっと大胆に挑戦したほうがいいと思っています」(清水氏)
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