配信ドラマ「彼ロン」が全話見られ続けたワケ 野島伸司脚本のブラックな「ラブコメ」が人気

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伝説の元受付嬢で、シングルマザー役の長谷川京子は存在感のある役どころ(写真:エイベックス通信放送/フジテレビジョン)

制御しない作りはせりふにも表れています。たとえば、“仕事したい女はキャリアブスに任せておくの”。仕事をしている女性から反感を買いそうですが、「仕事をしている女性はカッコイイ」と社会が作り出した単純な発想をあざ笑うかのようにも聞こえます。男性に対する本音も爆裂です。“責任を果たすことが大事なの。男が女を幸せにする責任”。表面的にうたう男女平等を痛烈に批判しているとも受け取れます。

地上波のドラマに慣れきっていると、耳を疑ってしまうようなせりふもあります。“世間ではきっぱり離婚したユウコリンが称賛され、それでも別れないヤスダミサコがディスられる”。このような実名を使用するシーンもあります。毎話、こうした鋭いせりふが満載で、聞き逃せません。20代の女性を中心に支持されながら、30、40代の女性層にも響いているようです。公式Twitterでは共感した台詞の投票結果が1~4話まで5話以降に分かれて公開されています。

「ドラマは共感させるだけでは物足りない」

でも、リアルを強調していれば、ドラマが面白くなるわけでもありません。結婚や子育てを巡って、女たちが心の内にしまい込んでいる本音を男性中心の制作陣がドラマの中で表現したことにその答えがありそうです。

「女性がどこかで思ってやっていることを面白おかしく表に出していますが、ドラマは共感させるだけでは物足りない。ファンタジー要素が入ったほうがより楽しめるものです。異性が作ることで、想像の域を持たせ、本音という現実から飛躍させることができるから、結末まで楽しむことができるのではないでしょうか」(清水氏)

だから、「彼女や奥さんが、実はどう思っているのか」と思う男性にもオススメ。そう怖がらずに気軽に見られそうです。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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