日本が「インフレになるはずがない」根本理由 アトキンソン氏「ペスト時の欧州に学ぶべき」

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同じ理屈は、基本的には住宅以外のさまざまな商品にも当てはまります。

住宅をお米に置き換えて考えてみましょう。日本では人口が減っています。その分、お米を消費する胃袋の数が減っています。当然ながらお米の消費量、すなわち需要は減ります。

量的緩和をしても、人口が減少する状況で、米の需要を維持または増加させるためには、一人ひとりがより多くのお米を食べて、肥満大国を目指すしか方法はありません。もちろん量的緩和をしたからといって、国民がこぞって肥満になろうとはしないでしょう。つまり、人口減少に伴う需要の減少には、量的緩和だけでは対処できないのです。

エコノミストは「人口減少」を軽んじすぎている

日本はこれから、いままでどの先進国も経験したことのない、大変な人口減少時代を迎えます。2015年から2060年にかけて、世界第5位の経済規模を誇るイギリスの経済を支えている3221万人の労働者を上回る、3264万人もの生産年齢人口が日本から消えてしまうのです。

このように急速に生産年齢人口が減ってしまう国では、「量的緩和」や「働き方改革」程度の政策を打ったところで、今後続々と表面化する問題に対処することはできません。教科書に書かれている政策では、日本を救うことはできないのです。

マクロエコノミストたちの提言する政策は、非常にオーソドックスな、どこの国でもやっている凡庸な中身のモノがほとんどです。私には、彼らが今、日本がどんな危機的な状況に追いやられているか、また日本経済の実態がどういう状態なのか、正しく把握しているとは到底思えません。

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