売り切れ続出、ぺんてる「シャープペン」の謎 アマゾンで2倍の価格で買った人も……

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「ある日急に欠品が増えて驚いた」と、国内営業本部マーケティング推進部の飯塚愛美さん(撮影:尾形文繁)

とはいえ、100円~200円のシャープペンが一般的だった開発当時、一定の支持は得たものの、1000円もするスマッシュが今のように大ヒットしたわけではない。発売時にあった0.3mm、0.7mm、ボールペンのバリエーションは消え、いつしか0.5mmのみの販売となった。

根強いリピーターはいるものの、国内で伸び悩んでいたスマッシュを支えたのは、海外市場だった。10年ほど前から主に韓国で売り上げがアップ。受験戦争が激しいお国柄のため文具にはこだわりがあるのか、日本製のシャープペンは人気で、スマッシュも学生たちに高く評価されているという。

一方、国内でもネット上でじわじわとシャープペンマニアの間でスマッシュを見直すムードが広がり、2013年にはアマゾンの「Best of 2013 年間ランキング(筆記具)」で1位に躍り出た。また、ちょうどこの頃、2008年に三菱鉛筆が、芯が回ってとがり続ける「クルトガ」を、2014年にぺんてるが、芯が折れない「オレンズ」を発表するなど高機能商品が登場し、シャープペンブームが始まる。

このようにシャープペンに関心が高まる中、2014年にユーチューバーのはじめしゃちょー氏が採り上げたことで爆発的なヒットに。その後も2016年に韓国で売られていたスマッシュの5色をロフトが日本で限定色として発売して完売が続出するなど、人気が続いているというわけだ。

市場を支えるのは中高生

「今後も仕様変更はしない」と話す、商品開発本部シャープ企画開発部部長の丸山茂樹さん(撮影:尾形文繁)

シャープペンのメイン購買層は、やはり毎日授業でノートをとる学生。興味深いことに、少子化だというのに、ここ何年も市場規模は右肩上がりだという。矢野経済研究所の調査によれば、2016年度のシャープペン市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年比3.3%増の155億円。驚くのは、昔と比べ単価が上がっていること。「現在ボリュームゾーン価格は450円~500円」と、丸山さんは説明する。前述した高機能商品の登場により、単価が上がるだけでなく、複数本を使い分ける学生が増え、市場は徐々に伸びているのだそう。

また、最近では学校でノート提出が増えており、成績に反映されることもあるため学生たちはノートをキレイにとる必要があるという。そんな背景もあり、昨今、文字が美しく見える細い芯がトレンドとなっており、0.2mmの「オレンズ」は女子中高生を中心に大ヒット。1回のノックで折れることなく書き続けられる機能を搭載した「オレンズネロ」(2017年発売)も、大人向けに企画した3000円(税抜)もする高級シャープペンだったが、学生が「カッコいい!」と殺到する結果になったという。こうした1000円以上の商品は、特に小中学生が入学祝いで買ってもらうなど、プレゼント需要が多いそうだ。

シャープペンブームもあり、改めて機能の良さや凝った仕様が注目され、空前のヒットとなったスマッシュ。「完成度が高いので、いじるところがない。今後も仕様は変更しません」と、丸山さんは話す。時を超えて愛される商品にはやはりワケがあることを、改めて感じた取材だった。

佐藤 ちひろ ライター・エディター

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さとう ちひろ / Chihiro Sato

インテリア専門商社にて内装デザインや商品開発リサーチ等を担当後、美容系ECサイトや新聞生活情報面の編集に携わる。独立後は企業取材やライフをテーマにした企画を中心に執筆活動を展開。東洋経済オンラインでは「めちゃ売れ!コスパ最強商品はコレだ」「溺愛される商品にはワケがある」など消費財関連の連載執筆を担当。プライベートでは1児の母。

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