おそらく1つは、「タフ」であるという点。開発当時は10万回のノック試験を行っていたそうで、それに耐えうる設計のままであるという丈夫な品質が支持されているようだ。
そもそもスマッシュは、製図用として支持を得ていた「グラフ1000」というシャープペンを一般向けに開発したものだが、当時の企画書にも「ガンガン文字を書くためのタフな機能」と記されているそうで、ヘビーユースに耐えうるタフさがコンセプトになっている。
たとえば、一般的なシャープペンと異なり、口金とグリップを一体化させているのだが、これにより口金が緩みにくくなるため、ガタつくことなく書き続けられるそうだ。
また、芯をカチカチと繰り出す「チャック」と呼ばれるパーツが金属なので、安価なプラスチック製シャープペンに比べ、芯が引っ込むことなく正確に出てくるという。確かに、ママ友のお子さんも「とにかく書きやすい」と絶賛していたらしい。筆者も取材時に使わせていただいたが、なるほどサラサラと引っかかりなく筆記できる。
また、このグリップが非常に特徴的。ベースは真鍮にマットな塗装を施しているので丈夫かつ滑りにくい。さらに、ボコボコと飛び出ているゴムが一層滑り止め効果を発揮しているのだが、「この内側からゴムを出す形状は今もほかで見かけない」と、丸山さんは話す。
安価な大量生産品を除くとシャープペンの組み立ては一般的に手作業で行われており、この形状はその際に手間がかかるため他社では採用しにくいのかもしれないという。ちなみに、この形状は昭和58年に「P115」(現在廃盤)という商品で初めて採用され、「グラフ1000」、スマッシュと受け継がれてきた。プロ仕様の丈夫さに加え、こうしたレア感も男子の心をくすぐるのかもしれない。
若き開発者たちのこだわりが凝縮
さらに、開発者のこだわりが感じられる要素が面白い。たとえば、製図シャープペンには必須であるという芯硬度を表す窓。製図用ではないスマッシュには不要な機能だが、あえて遊び心として備わっている。製図はパソコンで行える昨今、「職人の道具」の象徴であるようなこの窓の存在は、若者たちにとってより新鮮に映るのかもしれない。
そしてもう1つ、ノック箇所の蛇腹デザイン。バイクのショックアブソーバをイメージしており、コンセプトのタフさを表現したそうだ。「今と比べ、ニーズを考えるというよりも、作りたいものを作った感がありますよね」と、丸山さん。開発者とデザイナーはともに20代だったそう。
こうした凝った仕様を一つひとつ見ていくと、なんだか当時の彼らの開発への熱気が伝わってくるような気がする。そんな想像力をかきたてるマニアックな作りも、男子を魅了するポイントといえそうだ。
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